主な登場人物

・ヒモロギ小十郎中野の開化アパートに事務所を構える映画探偵。明晰な頭脳を駆使して「シネラマ島」の謎を探りつつ、たいしたことのない鑑識眼を駆使して映画感想を書きなぐる。感想中では内容のネタバレも辞さない(探偵だけに)。好きな映画は『激殺!邪…

(10)カフェー「けもの部屋」

帝都をうごめく好き者、のけ者、猟奇者が夜な夜なつどう新宿のカフェー「けもの部屋」の奥まった一卓に、赤いほっぺたをへこませながら、ストローでミルキセーキをのむ、かわいらしい少年の姿がありました。女給の過剰なサービスが売りである大人のお店で、…

(9)裏窓の怪老人

あやしげな紙芝居男のもとをあとにした舞木君は、その後はみちくさをすることなく、まっすぐ帰宅しました。そして、いつものように夕飯のキムチを食べ、あかすりで体をきよめ、朝鮮半島の方角へ向かってふかぶかと土下座をすると、自分の部屋にこもって、買…

(8)韓流レプリカント

怪紙芝居師のおじいさんは、とつじょパンパンパパンとかしわ手を打ちならしたかと思うと、お尻をなやましげにくねくねさせながら「ラララ、ラララー」とKARAの「ミスター」を高らかに歌いはじめました。「わっ、おじいさんがきちがいになった」「ちがうって…

(7)奇怪な紙しばい

ところかわって、荻窪あたりのしずかな屋敷町での出来事です。 その日の夕焼けは、かの怪監督タランティーノをも大いに魅了した『吸血鬼ゴケミドロ』のまがまがしい夕陽の色にそっくりでした。いまにして思えば、この夕焼けは、これから帝都に起こる世にも恐…

(6)探偵団結成

ヒモロギ小十郎にかわり事件を解決する「少年映画探偵団」を結成する……なんてすてきな思いつきでしょう。大林君は自分のアイデアにすっかり夢中になり、生活能力のないヒモロギ先生に昼ごはんを食べさせるのも忘れて熱心に探偵団結成の準備をすすめました。…

(5)血まみれ農夫

「オヤッ、なんだかおかしいぞ。いつも見なれているはずの探偵ランキングが、今日にかぎって、こんなにへんてこに感じるのはいったいなぜだろう?」 大林君は首をかしげながら、くりくりとした大きな瞳を皿のようにして、何度も何度もランキングをみつめなお…

(4)探偵の烙印

「先生、平良警部が事件捜査に協力してほしいそうですよ! はやくはやく! 四十秒で支度してください!」 受話器に手のひらを添えながら、少年助手の大林君はヒモロギ探偵を呼ぶのですが、ちょっと目を離したすきにふたたびCoDのマルチプレイモードに興じ始…

(3)ゆめの香り

「いったいぜんたい、ヴィレッジ・バンガードが大人おしゃれなお店じゃないだなんて、本当のことなんですか?」 海と坂と階段と尾美としのり以外は何もない尾道から、ネオンかがやく大東京にやって来てまだまもない、ポッと出の山出し少年である大林君は、て…

(2)撃たれた名探偵

「きゃーっ、撃たれた!」 帝都サブカル文化の発信地、中野ブロードウェイまでわずか徒歩二分という好立地にそびえる開化アパートに、とつじょ絹をさくような三十路男の叫び声が響きわたりました。 どうやら、なぞの悲鳴の出どころは映画探偵ヒモロギ小十郎…

(1)はしがき

そのころ、東京中の町という町、映画館という映画館では、ふたり以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人「二十世紀FOX面相」のうわさをしていました。 「二十世紀FOX面相」というのは、毎日毎日、新聞記事をにぎわして…

新れんさい「少年映画探偵 二十世紀FOX面相」のおしらせ

どこぞにゆかいですてきな映画ブログはないものかしら……そんなことを考えながら、webの大海をただよう有象無象のサイト群をたずね歩いていたある日の昼さがり。私はまるで白昼夢のごとく不可思議なブログに迷いこみました。 「シネラマ島奇談」なる奇題を冠…

『ゾンビランド』

リア充と非リア充を簡便かつ効率的に分別する方法はあるか? そのような方法は公式には存在しないとされているため、非リア充のごとき生産性の低い無価値なポンコツも無慈悲な民主党政権に事業仕分けされることもなく、したがって国会議事堂地下の谷亮子専用…

『ウォッチメン』

ほら僕らバカだからさ、映画の内容とか格調とかメッセージ性とか実はどうでもよくて、そんなもんよりも残酷な人体破壊描写とか見せてもらったほうがよっぽどテンションが上がるわけじゃないですか。 でも僕らバカだからさ、バカというのは所作のいっさいがモ…

『ヤッターマン』

だから三池監督の作品だっつってんのに、保護者の連中はなぜ子供を連れて劇場にやって来るんでしょうか。単に学習能力がないのか(『妖怪大戦争』)、あるいは自分の息子を生首ボールでサッカーをするような腕白に育てたいのか(cf.『極道戦国志不動』)、ま…

『街の灯』

Tomorrow the birds will sing. 明日が来れば鳥も歌うよ。と、今まさに自ら命を断とうとしている哀れな富豪にむかって浮浪者のチャップリンは言ってあげるわけですよ。Tomorrow the birds will sing.本当にいい言葉だなあ。昨日tumblrをしていたら、「文章の…

『おいしい生活』

あ、なんかこの人いいなあ、と僕が好印象を持つ女性は58パーセントくらいの確率でウディ・アレンの映画が好きだと言うので、これは押さえておいて会話の引き出しとして活用せねば、と考えウディ・アレン映画を見まくった若き日々を、ゆえあって勃然と思い出…

『ワンダとダイヤと優しい奴ら』

ロンドンの銀行を襲撃した強盗チームが手に入れたダイヤをめぐり各種悪知恵や浅知恵を働かせたり働かせなかったりする英国風味クライムコメディ。英国風味というよりもモンティ・パイソン風味といったほうがよいかもしれませんね。どもりのキャラが徹底的に…

『デス・レース』

その中二病的世界観が世界中の中二から大絶賛された『デス・レース2000年』のリメイク作。 ・原作の得点加算方式(レース中にひいた人間の種別によって点数加算。女性40点、少女70点、年寄りは性別問わず100点)がなくなった・物事の道理を解さぬ小4がデザイ…

『トロピック・サンダー』

『地獄の黙示録』は今でこそ戦争映画の金字塔とされていますが、撮影中はトラブル続きで監督のコッポラさんはめちゃんこ大変だったそうです。ハーヴェイ・カイテルの降板に始まり、マーティン・シーンは心臓麻痺でダウン、マーロン・ブランドは肥えすぎちゃ…

『レッドクリフ』

いやもう三国志が大好きで大好きで。 僕の場合、入り口はスーファミ版『三国志3』で、その後は吉川版『三国志』→横山版『三国志』→中国中央電視台版『三国志』→マンガ『蒼天航路』→オンラインゲーム『三国志大戦』といったかんじの三国遍歴。今も北方版三国…

『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇』

スーパー燃えるロボットアニメの総集編。「自分を信じるな! 俺を信じろ! お前を信じる俺を信じろ!」という兄貴分のかっけー詭弁にそそのかされて新天地に旅立った少年が、やがて兄貴分の死に直面し、絶望のどん底を自らの吐瀉物にまみれながら這いずりま…

『ファンタズム』

ここんとこ物凄いペースで悪夢ばっかり見ています。昨晩なんか三本立てで悪夢鑑賞しちゃいましたよ。 さーて、昨晩の悪夢さんは……「ヒモロギです。すっかり秋めいてまいりました。食欲の秋、読書の秋、芸術の秋などと言いますが、わたしはやっぱり悪夢の秋で…

『新幹線大爆破』

二十年ぶりにディズニーランドへ遊びに行ったら、アトラクションから何から当時とはずいぶん様変わりしていて驚きましたよ。「キャプテンE.O」とかなくなっちゃってるしね。うちの相方もランドのほうは久しぶりなんつってチュロス片手に大はしゃぎでね。閉園…

『ダークナイト』

僕のベストオブバットマンはティム・バートン監督のダメ人間愛が炸裂しまくりの大名作『バットマン・リターンズ』であり、この評価は今後何十作バットマン映画が制作されようと変わらないと思いますが、本作はそれに次ぐくらいの面白さでした。アメリカで大…

『崖の上のポニョ』

男一人で観に行くのはちょっと恥ずかしいかもなあ……と思いつつ夜遅くに歌舞伎町の映画館に足を運んでみたところ、客席はまばらで子どもなど一人もおらず、館内にいたのはホームレスとヤクザとホストだけだったので、僕もリラックスして観ることが出来ました…

『スティング』

フッカーとゴンドーフの若手ベテラン詐偽コンビは友人の仇をうつべく、こわもてマフィアのロネガンに一世一代のハッタリ詐偽をかまそうとするのだが……といったかんじのアカデミー賞受賞作。脚本・俳優・音楽すべてが素晴らしいという稀有な作品。復讐譚のく…

『片腕マシンガール』

忍法ヤクザに弟を殺され片腕をもがれた女子高生が、失った腕の代わりに自動車修理工お手製のマシンガンを装備して復讐の炎を燃やすピンキー&バイオレンスムービー。この粗筋にまったくグッとこない人間とは、僕は一生かかっても、弥勒菩薩が下生する五十六…

『椿三十郎(黒澤版)』

[rakuten:book:12107332:image] いやあ、やっぱ何回観ても面白いですな(言うまでもないことですが、とうぜん黒澤版のほう)。何度みても楽しめるコンテンツというのは僕にとってはものすごく稀有で貴重です。マンガだったら、重ねての鑑賞に耐えうるような…

『トランスフォーマー』

「映画秘宝」では2007年のワースト映画と認定されていたので今まであえて観ようとも思わなかったんですが、いざ観てみたらけっこう面白かったです。これがワーストということはないだろう映画秘宝。秘宝もいつのまにかずいぶんと審美の眼が濁ってきたものだ…