『トランスフォーマー』

トランスフォーマー スペシャル・コレクターズ・エディション (HD DVD)


 「映画秘宝」では2007年のワースト映画と認定されていたので今まであえて観ようとも思わなかったんですが、いざ観てみたらけっこう面白かったです。これがワーストということはないだろう映画秘宝。秘宝もいつのまにかずいぶんと審美の眼が濁ってきたものだなあ。

 タイトルが『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』ではない、コンボイ司令官の名前がアメリカ版の「オプティマス・プライム」になっていたりする等のマイナス点はあるにはあります。しかしながら子供のころタカラのトランスフォーマーよりもバンダイマシンロボのほうが好きだった僕にとっては(5歳児の頃からバンダイにカモられっ放しの超搾取生命体)、トランスフォーマーに対するマニア的なこだわりはなく、おかげで細かいところにカリカリしたりすることもなくゆるりと本作を楽しめました。

 まず特筆すべきは映像。映画のCG映像に驚いたのは『マトリックス』以来だと思います。理解できないほど煩瑣で細々しい、かつ生物的・アナログ的な変形をガチャガチャと繰り返す超ロボット生命体各位のガチャガチャ動画にすなおに感動し、僕はちょっと超感動生命体になりました。この映像体験はすなおに楽しい。

 また、超ロボット生命体がみんなボンクラばっかしなのも大変ゆかい。
 たとえば、オンボロ中古車になりすまして主人公が車を買いにやってくるのをじっと待ってたという微笑ましいエピソードを持つ超聾唖ロボット生命体バンブルビーは、ドライブデートの状況に応じてカーラジオの選曲を独断で行なうというカーステソムリエ。というか至って大きなお世話。ちなみに、このひとが擬態しているのが黄色と黒のツートンカラーのカマロなので、このひとが気合を入れると『キルビル』のテーマがかかります。この映画を作った超制作生命体の人たちはちょっとふざけすぎだと思う。

 いいもの側であるサイバトロン軍のリーダー・コンボイ司令官もこの映画のなかでは阿呆なので、見越し入道くらいタッパがあるのに主人公の家までノコノコやってきては庭をめちゃくちゃにしたりします。その後、庭になにかいるんじゃないかと不審がる主人公の両親から何度も必死で身を隠すシーンが長々と続いたりするのですが、こういうゆるいエピソードが僕は大好き。「8時だヨ!全員集合」で超下唇生命体・いかりや長介が振り向いた時だけメンバーが真面目なフリをするというおなじみのコントをえんえんと見せられているようでもあり、僕は思わず超志村うしろうしろ生命体にトランスフォーム。秘宝は本来こういうしょうもないシーンのある映画こそ評価すべきではないのか。

 というわけで、自国の特産品を次々海外で映画化されている情けない状況の本邦ですが、こと『トランスフォーマー』に関してはアメリカさんに作ってもらってよかったね、というかんじです。日本の製作者に任せたのでは、あのような超映像と超ゆるい演出は両立しえず、どう転んでもそつのないこじんまりとした作品にしかなりえませんもんね。

 あ、そうだ。関係ないけどバンダイマシンロボで思い出した。マシンロボといえば、こんな思い出があるよ。
 あれは僕が幼稚園の年長さんのときのことであった。新幹線からロボに変形する新幹線ロボを持っていた僕に対し、僕とおなじ月組のマエサワユウヤくんは彼の所有するダンプロボとのトレードを持ちかけてきた。僕は当事最先端の乗物である新幹線を模した新幹線ロボがすごく気に入っていて、しょせん土方の乗物であるダンプなんかには興味がなかったのだけれど、マエサワユウヤがあまり熱心に頼むものだから、まあ、ここで交換に応じてあげるのが友情というやつかな、などと情にほだされ交換してあげることにした。さて、家に帰ってからダンプロボをダンプから人型に変形させてみたところ、なんと両腕がない。ぶっ壊れてもげている。ロボは両腕を内部に折り込むことによってダンプに変形していたため、僕はダンプロボが欠損していることに気づかず、新品の新幹線ロボをまんまとマエサワユウヤに騙し取られてしまったのである。僕は生まれて初めて人から騙されるという経験をした。その時から僕は人間を信じることをやめ、また、残されたシャトルロボやハリヤーロボを用いてマエサワユウヤと名づけた不具のダンプロボを一方的に破壊・殲滅するシナリオでひとり玩具遊びをすることを覚えた。しかるに僕の人間不信と歪んだ空想癖とダンプぎらいは一台のダンプロボに端を発しているのである。
 というね、まあ、書き出してみたら本当にまったくなんの関係もない話だったよ。