『椿三十郎(黒澤版)』

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 いやあ、やっぱ何回観ても面白いですな(言うまでもないことですが、とうぜん黒澤版のほう)。何度みても楽しめるコンテンツというのは僕にとってはものすごく稀有で貴重です。マンガだったら、重ねての鑑賞に耐えうるような作品なんて『キン肉マン』と『ジョジョ』くらいしかありませんもん。

 三年くらい前にも本作の感想を書いているけど、その時ぼくはまだ二十代のひよっこ、その名もヒモロギ二十郎。あれからあまたの荒波を乗り越えて、違いのわかるヒモロギ三十郎へとクラスチェンジを遂げたいま、改めて本作の感想を、より重厚にして繊細かつ作品の本質を突いた三十代的感想を、執筆せしめんと思う次第である。えへん。年おさなく愚かなゆとり世代どもは、我が至高の映画評を、こうべを垂れて落涙しせいぜい重畳がりながら拝読するがよい。

 本作は、えー、なんつうか、黒澤作品の中でもっともポップでロックな作品だよね。ファンキーでダンサブルだぜ。ひゅー。そんでもってやっぱあれだよね。ラスボスの仲代達矢とミフネ・オブ・ワールド(MOW)のラストバトルが超かっけー。双方対峙してまったく動かない。じりじりじりじり。しかるのち勃然として決着。居合いの作法ガン無視のMOW必殺逆手外道斬りが絶賛大炸裂。ラスボスの胸元からありえない勢いで鮮血が噴き出して、まるでメントスコーラみたいなことになってやがんの。いやはやかっけー。まじかっけー。これを越えるタイマンバトルは古今の映画を探してもまずないっすよ。マジで。観るたびそのつど大昂奮。すっげー。ぽっぽー。うっひゃー。

 みたいなかんじで。ね。今の三十代っつってもおおかたこんなもんですよ。昔の三十郎は成熟した一人前の漢〔おとこ〕であり、「本当にいい刀は鞘に納まっているもんなんだぜ」なんつったりなんかして阿呆なゆとり侍たちに人生の訓示を垂れたりもしたものですが、ひるがえって今の三十郎はどうだ。あの映画史に残る名シーンを解説するのに「メントスコーラ」しか形容を思い浮かばないというのはなにごとか。映画評を「うっひゃー」なる感嘆詞で終らせて、それで文章を締めたつもりになっているとはなにごとか。それよりもなんだ「ぽっぽー」とは。なにを表現しようとしたすえの「ぽっぽー」なのか。企図がまるで不明である。三十代の国語能力は果たして大丈夫なのか。日本に暗雲が垂れ込める。この国を滅ぼすのはゆとり世代ではない、いつまでたっても幼稚で、いつまでたっても『キン肉マン』の話ばかりしてるような阿呆の三十代だ! おれだ! 宮城のご当地超人がモンゴルマンって、いったい何つながり!? みたいなことを毎日えんえん考えてる!