『デス・レース』


 その中二病的世界観が世界中の中二から大絶賛された『デス・レース2000年』のリメイク作。 
・原作の得点加算方式(レース中にひいた人間の種別によって点数加算。女性40点、少女70点、年寄りは性別問わず100点)がなくなった
・物事の道理を解さぬ小4がデザインしたミニ四駆みたいなデザインの車ばかりだった原作と比べて、本作はまったく普通でつまらない没個性的なデザインとなった
・悪いスタローンが出てこない(よいスタローンも出てこない)
の三点は大幅な減点対象ですが、それを差し引いたとしてもそれなりに面白い作品ではありました。原作と同様に話のつじつまは滅茶苦茶でしたしね。

 今回は民間刑務所が営利のために囚人を使った危険なレースを放送して大金を稼いでいるという設定で、アメリカのケーブルテレビで本当に放送してそうなかんじのフェイク番組の作りこみなんかはすごくよかったなあ。というか、アメリカは本当にこういう番組を作りそうだからあなどれない。

 なお、今回のレースはあくまで視聴率を稼ぐことが目的なので、レースがダレて視聴率が下がったとみるや、刑務所の女所長は超弩級殺戮トラック“ドレッドノート”を発進させ、特にこれといった理由はないのだけれどレース中のマシンを破壊し、なんとなくレーサーを殺しまくります。刺激を求める視聴者にとってはなんとも心憎いテコ入れではありませんか。昨今くだらぬ番組を作りすぎて視聴率の低迷にあえいでいる日本のテレビ業界も、女所長の真摯でアイディアに満ちた番組作りに学ぶところが多いのではないだろうか。

 たとえば、例によってしょうもない雑学クイズやニュースもどき番組を放映しているとするでしょ。なんかこの時間帯は視聴率低そうだなあ、と感じたプロデューサーが手元の「視聴率バースト」とか書いてあるボタンを押すと、ドラクエ3カンダタみたいな恰好のあらくれがスタジオに登場、彼のいかつい手は特定の宗教を信仰するタレントの髪の毛をむんずと掴んで引きずっておるわけです。そしてその特定の学会に所属しているタレントをひな壇のようなところに上げて、そして番組進行とはまったく脈絡なくそいつのおしりを思いっきり蹴っとばす。さすればきっと視聴率はうなぎのぼりに違いない。そしてお尻を腫らしたタレントが退場してから、何事もなかったように雑学クイズを続けて「お中元」の由来とかをまた皆で考えればいいんじゃないの。そして某学会タレントの流す血の匂いにつられてチャンネルを合わせた悪たれ視聴者どもはお中元の起源が実は道教の暦にあったことを知ってたったの0.5ミクロンくらい賢くなり、プロデューサーは視聴率が向上したことによって上機嫌でザギンにグーフーを食いに行き、そして業界からは害にしかならない某学会タレントがほんの少し駆逐され、三方一両得なんじゃないの。まあ、僕はアニマルプラネットしか観ないから日本のテレビのことなんてどうでもよいのだけれど。日本のテレビとかって、なんかこないだ『エドはるみ物語』みたいなの放送してたんでしょ。そりゃないよ。堕ちるとこまで堕ちたというか、いくらなんでも堕ちすぎです。地獄の階層でいったらコキュートスくらいの深さですよそれは。もっとしっかりしてください。