『それでもボクはやってない』


 就職活動中のフリーターが面接を受けに行く道すがら、満員電車の中でそわそわしていたら痴漢と間違われて拘留、否認を続けていたら起訴、更に長期間の拘束と裁判を余儀なくされ、冤罪のせいで人生が大変なことになってしまうというお話。

 テーマは明快。僕らがなんとなく信じている「裁判は真実を明らかにするためのもの」「法律は正義のためのもの」という胡乱な幻想に対して、現状はどうなっているかということを懇切丁寧に描き出しています。本作を観ると、法律に対する無知がいかに危険かという事、警察や検察は有罪をもぎとるためなら『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』のジミー・ウォングばりの悪辣なインチキ技を余裕でかますという事、裁判官のパーソナリティや主義主張などという、こちとらんなもん知ったこっちゃない的な価値基準にゆだねる部分が裁判ではかなり大きいという事等々、裁判に関するホラーなひみつがよくわかります。非常に考えさせられるところが多い内容だし、映画としても展開がスリリングで面白いし、とても良い映画です。

 僕も毎朝満員電車に揺られて探偵事務所まで通勤しているわけですが、この映画を観てからというもの、痴漢に間違われて冤罪で人生を滅茶苦茶にされやしないかと怖くて怖くて、身動きの取りづらい車内で隣の女性が体を寄せてくるたび悲鳴を上げそうになってしまいますよ。お前うっとうしいから女性専用車両にいけよ、と思うんですが。ほんとうに女ってやつは、専用車両があるのにわざわざこんなところにやって来て。ばかだな。うん、女はばかだよ。

 上記の如く、僕は女性を劣性種として見下すことによって、女性に縁の無い自分を自己弁護し精神のバランスをようやく保っているかあいそうな人なのですが、かような僕の女性蔑視的観点から考えるに、女性に「女性専用車両」を与えるのは勿体無いと思うんだ。
 古来より「専用」という言葉は男にこそ相応しいものでありました。シャア専用ザクシャア専用ズゴックランバ・ラル専用ザクIジョニー・ライデン専用高機動型ザクII……そう、「専用」とは本来戦場で武勲を挙げた者にのみ贈られるエースの証であったはずなのです。それなのに、「女性専用」ってなんだ! ふざけんな! 女子供がシャアと同等の権利を主張すんな! お前らは連邦軍の防空小型戦闘機FF-4、通称“トリアーエズ”あたりからやりなおせ! と思うんです。

 更に論を進めて、車内の痴漢犯罪を減らすためにはむしろ「男性専用車両」の開発・運用こそが急務、と僕は考えます。だってほら、痴漢などという卑劣な犯罪を犯す男なんてたいてい陰湿で粘着質なオタクで、間違いなくほぼ全員がガンオタだから(偏見)、外観は真っ赤なカラーリングで、側面にトゲトゲとかシールドとかバルカン砲とかがついていて、車内モニタではギレン・ザビ総帥の演説がエンドレスで流れ、車内の放送案内が池田秀一ボイスで「新宿駅……出るぞ!」だったりする「男性専用車両」があったら、絶対これに乗るに決まってます。名誉ある「専用機」への搭乗よりもしょうもない女の尻なんかを選ぶバカな男は存在しません。すると事態はどうなるか。……そう、痴漢を含めた男全員が専用車両に殺到する。女とは乗る車両が完全に分断され、物理的にさわれなければどうということはない。よって痴漢犯罪消滅。冤罪事件激減。きみは生き延びることができた! いえー! ってなもんです。このすばらしい案をぜひ吟味検討して実現を目指して頂きたい。起てよ国鉄! 国鉄じゃないか。