『アポカリプト』

アポカリプト [DVD]


 川口浩探検隊シリーズに深い薫陶を受けた僕にとってはまったくもって堪らない、感涙快哉ヨダレだくだくの傑作ジャングル映画です。土人たちが血で血を洗い殺戮しあう野蛮でモンドでヤコペティックな映画が21世紀の御世に作られるとは、まさか夢にも思いませんでした。メル・ギブソンってすげーなー。だいたいにして映画人なんつうものは、もうろくするにつれて気取った芸術路線の袋小路に迷い込んでいくのが常なのに、この人は年を取るにつれて残酷強度が年々1000万パワーぐらいずつ上昇しているのは一体どういうわけだろう。何を考えているのかよくわかりませんが、きっとただの変態なんだと思いますが、むしろただのドSなんだと思いますが、まあいいやもっとやってください。

 ストーリー。ストーリーね。はいはい。えー、マヤ帝国の奴隷狩り部隊vs逃亡土人の殺人追いかけっこin森の中。それ以上でも以下でもなく。登場人物は、土人土人土人、バク、ジャガー、毒ヘビ、毒ガエル、毒ハチ、あとは生首、生首、生首。豪華ジャングルスター総登場。うーん、ソリッド。もちろん僕らの大好きな底なし沼や大瀑布や落ちたら最後登れなくなる縦穴とかも登場するよ! そして人間があらゆる手法で残虐に殺戮されていくんだよ。ソリッド&ソリッド。やった!

 こんな残酷見世物映画であるので、デートムービーとしては最悪のチョイス。デートでこんな映画を観に行くような馬鹿は、せいぜいトラヴィス・ビックルクラレンス・ウォリーとヒロシ・ヒモロギくらいなものでしょう。
 初デート相手のインテリ女をポルノ映画館に連れ込むトラヴィスソニー千葉のカラテ映画がかかっている場末の映画館で美女と運命的な出会いを果たしたと錯誤するクラレンス、デートだろうとなんだろうと自分の興味のない映画を観るのに耐えられず、あからさまにイヤがっている女の子を引きずってまでゾンビ映画を観ようとするヒモロギは、映画デート界のKY御三家と呼ばれており、とりわけヒモロギのヒドさはとみにヒドすぎてここに書けない。というか書きたくない。そもそも一般人の女子と一緒に観に行く映画のチョイスとして『マタンゴリバイバル上映とかって正直ありえない。あってはならない。ならなすぎるんですが、考えようによっては、デートの失敗を全て映画作品の内容そのものに転嫁することが出来るため、それはそれで便利。がために、僕は女子と映画を観に行くような一遇の機会を得るたびに、よし、初めて彼女と二人きりで映画を観るわけだし、まずは『変態村』だな、みたいなチョイスをついついしてしまうんですよね。たとえフラれても俺は悪くないんだぜ、『変態村』のイカれた作風が悪いんだぜ、みたいな、臆病な自尊心。ああ、なにやってんだおれ。そんなことをしていてはいつまでたってもダメだ。本当になにやってんだ。ちょっともう、いいかげんにしろ。