『Mishima: A Life In Four Chapters』


 フランシス・フォード・コッポラジョージ・ルーカス制作、ポール・シュレーダー監督、出演は緒形拳沢田研二坂東八十助その他もろもろ……という豊饒なスタッフの手で作られながらも、日本では未公開・未ビデオ化・未DVD化という不遇な作品です。
 話の内容はといえば、自決決行当日の三島の姿を追いつつ、『金閣寺』『奔馬』『鏡子の家』といった三島作品の映像がそれに絡みつき最後に渾然一体をなすというMISHIMAづくし、いわばスーパーMISHIMA大戦。主題歌はスパロボシリーズでお馴染みのJAM PROJECTに提供してもらえばよかったのにね。
 個人的な鑑賞ポイントとしては、MISHIMA vs 全共闘の多勢に無勢なトークバトルがわりと忠実に再現されていたので驚きました。あとは、自衛隊にヤジられてSyunとするMISHIMAの姿が切なくて胸がKyunとなった。

 ところでJAM PROJECTといえば、彼らの勇壮な楽曲はアニソンの進化系・集大成というよりも、むしろその源流たる「軍歌」への先祖がえりなんじゃないかと僕は思っていて(たとえば「未来への咆哮」なんて歌詞が軍歌よりも軍歌的です)、数多のアニメ・ゲームに曲を提供し続けるJAMの世界的人気を鑑みるに及ばず、オタクと軍人・武士・国粋の思想というのは実は凄く相性がいいんですよね。そう考えると、現代のサムライたらんと苦闘した果てに自らの様式美に呑み込まれていった身長160センチのMISHIMAの最期は、一人のオタクの壮大なるコスプレの完結に過ぎないといえるような気もしないでもなく。だがむしろそこが良いというか、MISHIMAの人生にはオタクの僕を物凄く焦がれさせるものが詰まっているというか、人生の規範になるものは何か、というものを考えてみる時、俺ジナルなカスタム軍服に身を包んだMISHIMAの姿が真っ先に浮かんでしまうので、きっと僕はオタク種のなかでも様式と自滅とをより好む、より楯の会ライクな人なんでしょう。市ヶ谷近辺を通るときはムラムラきちゃわないよう気をつけようと思います。