『HOT FUZZ』


 良識ある映画愛好者たちによる署名活動が行われているにも関わらず日本ではいまだ劇場公開の予定もDVD化の予定もないという本作。代わりにシネコンでかかっているのは不治の病がどうしたとか被災地で犬っころがどうしたとか、阿呆女子御用達の安物ばかり。日本の映画界には義侠心のかけらもないぜ。やれやれだぜ。ということで、僕はやむなくスタンド能力を発動。千里眼スタンド能力「スマイル・スマイル・ザ・ドゥーガー」を用いてドグオォォンと本作を鑑賞せざるをえませんでした。スタンドを使わないと良質映画もロクに観れないなんて変な時代ですね。女なんかに映画を見せるからこういう事になるんだよ、と僕は本気で思っています。

 さておき『HOT FUZZ』。評判どおりの名作でした。ポリス・コメディで始まり、推理ものにシフトし、突如ホラー化し、ジョン・ウーばりのアクションで盛り上げ、すべての伏線を回収して終劇というスキのない構成。ゆでたまご目当てでジャンプを買ったら諸星大二郎原哲夫武論尊のおもしろマンガも載っていた、みたいなジャンプ黄金時代的お得感のある映画です。

 中盤のホラー展開(田舎の共同体に住んでいるのはキチガイばっかし! というモロホシックな設定)も好きですが、本作の要はなんといってもラストの銃撃戦。仲良しバカ二人組が横っ跳びしながら二挺拳銃をぶっ放すシーンあたりで沸点に達する盛り上げ方の上手さはなんだろう。ためて撃つ。そんな緩急のつけ方の妙につくづく感心するばかり。こんな良作を埋もれさせている日本の映画界の現状というのは、やはりどう考えても異常。かといって僕ひとりのささやかなスタンド能力では日本映画界の現状を打破することなど出来るはずもないので、べつにどうでもいいや。さて、これからスマイル・スマイル・ザ・ドゥーガーを発動して大長編ドラえもんの一気観でもするとしようかな。『のび太の鉄人兵団』は『ゾンビ』の魂を正しく受け継いだ大傑作だよね! しずかとリルルの百合もあるしね!