『28週後...』


 明けましておめでとうございます。三度のめしよりゾンビが大好きなヒモロギ小十郎です。今年もよろしくお願いします。ははは。

 今年のスクリーン初めは『28週後...』。レイジ・ウイルスの感染者(ぶっちゃけゾンビ)により壊滅したロンドンが舞台の前作から更に時間が下り、復興作業が進んで帰国者も増え、みんな油断して調子に乗り始めた頃の物語です。

 愛する奥さんをほっぽって全速力のBダッシュで逃げまくる旦那のシークエンスが序盤のキモであるこの映画は、人の愛や善意の薄っぺらさを描くことに余念がありません。追いかけるゾンビと逃げ惑う住民の区別がつかなくなった駐留米軍が「全員殲滅」の指令を狙撃班に下すシーンなどはとみに素晴らしい。あ、非常時における為政者側の酷薄を描くのはゾンビものの命題のひとつです。『バタリアン』なんか生存者のいるところに余裕で水爆落としますからね。まったくひどい話だぜ。誰が政治しとるのか。

 そしてゾンビ映画におけるもう一つの裏テーマとして忘れてはならないのが「終末世界黒人最強説」。ロメロ監督作『ゾンビ』以来繰り返し描かれてきた劇中黒人最強説は本作で更に補強されることとなりました。本作に登場する黒人はヘリコに乗った米兵なのですが、彼はたださえ超低空飛行のヘリコを更に超前傾姿勢とし、そのままゾンビの群れに突っ込んで連中を回転翼でミンチにするという超絶美技を披露。いやはや実に素晴らしいシーンでした。今年観た一本目の映画のシーンでありながら、早くも2008年鑑賞映画のベストシーンとしてここに認定させて頂きます。

 さて。幾度もの震災を経験し防災意識は十分に高いと言われるわが国ですが、しかしちょっと待ってほしい。各家庭でカンパンや懐中電灯をいくら備えたところで、それでは地震や台風からしか身を守ることが出来ません。きたるゾンビハザードから生き残るためには……そう、黒人の存在が必要不可欠なのである。ガタイのいい黒人が近所に一人いれば、遠くのゾンビはショットガンで撃ち殺し、近くのゾンビは豪腕パンチで殴り殺し、動揺する住民を持ち前のブラザーソウルで統率し、我らを遥か遠くの別天地・難民キャンプまで連れて行ってくれること必定なので、皆さんはご近所に強そうな黒人がいるかどうかをぜひ一度ご確認されるのがよろしいです。

 翻って我が身を鑑みるに、あれ、そういえば僕の住んでいる西荻窪で黒人を見かけたことはただの一度もないような気がする。フランス料理レストラン「こけし屋」の前でヘイ、メ〜ンとか言いながらお互いの拳をガシガシと合わせたり握ったりの変な手話的挨拶をしているブラザーたちなんて見たことがないし、行列の出来る洋食屋「キャロット」に並びながらカンフー的な構えで周囲を軽く威嚇しているジム・ケリー似のアフロ黒人を目撃したことすらない。こ、これは由々しき事態である。西荻窪あんまし黒人いない説! さらにそこから導き出されるのは、ゾンビが湧いたら西荻速攻で壊滅説! こ、こうしてはいられないぞ。というわけで、近く六本木に引っ越します。メ〜ン。