『デス・プルーフ in グラインドハウス』


 デス・プルーフ(耐死仕様)! そんなカッチョいい兇悪改造を施した殺人改造車を駆り、女性を轢き殺すことで性的充足を得ようとする困ったおじさんが大暴れするプッシーキリングスラッシャームービー。映画が始まって暫くはタランティーノ節の会話劇が続く一方で動き少なく退屈な展開で、不遜にも「あれ、もしかしてコレ凡作?」などと不埒な考えが頭をよぎってしまいましたが、そこはそれ、さすがは僕らのタランティーノ先輩です。後半のボルテージの上がりっぷりは異常なほどでした。一瞬でも疑ったりしてごめんなさい。そしてあのエンディング! 僕は腹をよじって爆笑してしまいましたよ。すばらしすぎます。おもしろすぎます。かっこよすぎます。ファッキングレートすぎます。この人を信じていればぜったいに間違いがないというか、タランティーノ先輩は僕にとっての太陽神みたいな人ですよ。ちなみに冥府の神はテルオ・イシイね。タカシ・ミイケは多産型なので地母神系の神さまでしょうか。カズユキ・イヅツあたりなんかはしょぼい系妖怪「そで引き小僧」とか「枕返し」とか、なんかそこらへんのポジション。

 以下、若干のネタバレを含みます。
 本作の内容を大きく区切ると二部構成。元スタントマン殺人鬼、カート・ラッセルに狙われる女性グループは二組いるわけです。前半のグループはラッセルさんに皆殺しにされてしまうのですが、従来のスプッラター・ムービーのように一人ずつ順々にじわじわと……という殺し方ではなく、一行の乗った車にデス・プルーフ車をぶち当てて一気にぶっ殺す! という殺り方。至極爽快で気持ちよかったです。えじきとなる女性たちそれぞれにそれっぽいドラマを用意しておいて、もしかしたらこの娘は最後まで生き残るのでは……なんてことを匂わせておきつつ全員瞬殺! ちぎれる脚! ねじれる首! つきささるフロントガラス! 恐怖に怯えるヒマなど与えられることなく一瞬にして物言わぬ肉塊にされてしまうビッチなお嬢さん各位。うおー、なんだかすごくすっきりする! このすがすがしい爽快感はなんなんだ!

 後半は後半ですんごく面白くて。前半では『激突!』のトラック運転手のごとき絶対的かつ不気味な立ち位置にいたラッセルさんが、今度は一転して追われる立場となるという設定の妙。毎回女性グループ、しかもビッチばかりを狙っていたラッセルさんがその日選んだびっくりどっきりビッチは、不運なことに銃を所持していて、なおかつ現役カースタントマンで、しかもそのうえバカだった! 彼女らときたら、走行中の車のボンネットの上に乗っかってふざけたり、やたらカッコいいハコ乗りのしかたで殺人カーを追いかけたり、ヒャッハー!みたいな奇声をあげて鉄パイプで殺人鬼をなぐったり、しかもためらいゼロだったり、なんかもう素敵にバカすぎます。僕の選ぶ今年のナイス・ビッチ・オブ・ザ・イヤーは間違いなく彼女たちです。そして、重ねて申し上げますがあの衝撃のエンディングは最高です! 今年のナイス・エンディング・オブ・ザ・イヤーも同時受賞で、タランティーノ先輩おめでとうございます! 先輩ならやってくれると思ってました! だいすきです!