『直撃地獄拳 大逆転』


 新文芸坐オールナイト上映レビューの続きということで、今回は『直撃地獄拳 大逆転』です。以前ビデオで観た時よりも、映画館で観た今回のほうが数倍楽しめました。この作品はやはり映画館で大勢の観客と共に爆笑しながら見るべき映画、いわゆる「パラディソ座」スタイルの映画なのだと思います。 

 さてもこの映画ときたら、発想が超小二級。本作には忍者(千葉真一)・元刑事・金庫破りという三人のメインキャラクターが登場し、互いにいがみ合いながらも共闘しお宝争奪を試みるのですが、とにもかくにもこの三人の仲が悪い。妖怪でいったら舞首くらい悪い。ことあるごとに小学生レベルのケンカ・いたずら・ふざけっこをするのですが、それが本作の面白さの中核となっています。仲間の飲み物にハナクソを入れる。それに対抗してフケを入れる。敵のアジト潜入中、後続の仲間におならをかます。おしっこで仲間の服についた火を消す。等々、オール排泄物大進撃。きみら本当に排泄物好きだなー。どんだけ小二だよ。あきれるぜ。などと、かくいう僕も人間の排泄物一式がハンパなく大好きなので、夜中の二時に池袋の映画館でこんなもん観ているわけなんですが。

 クライマックスの最終バトルも特筆もの。ヒドい。ヒドすぎる。ヒドすぎて言語を用いて説明しきれないくらいヒドい!
 チョップを浴びて目がスポーンと飛び出る敵キャラ安岡力也! どこからかヌンチャクを持ってきて得意げに振り回し始める忍者・千葉真一! 唐突に現われて乱闘に参加する社長秘書・志保美悦子(何故かチャイナドレス)! 突然現われた保険会社の老社長は顔の皮をピリリと剥がし、中から現われたのは不敵に笑う丹波哲郎! 等々、畳み掛けるようなデタラメの数々に爆笑と感動を禁じえません。デタラメもイヤになるほど積み重ねればやがて感動へと転化する、という驚きの真理を僕はこの映画で学びました。べつに知らなくてもまったく困らぬ真理でした。もっと人生のなかで有効的に活用できる真理を、僕は、知りたい。

 ちなみに僕が毎朝乗る地下鉄東西線で、やたら頻繁に鼻をほじったり頭をボリボリ掻いたりしている挙動不審な中年男としょっちゅう同じ車両に乗り合わせるのですが、僕が奴に「地獄拳」というあだ名を付け、「地獄拳オッス! 今日も朝っぱらからほじってっか? 命みじかしホジれよはなくそ! なんつってな! じゃあな、ホジバイバ〜イ!」などと毎朝心の中でせっせと話しかけていることを、奴こと地獄拳ホジ郎は知る由もないのであった。