『怪談』

 三遊亭圓朝の怪談噺「真景累ヶ淵」をJホラーの第一人者中田秀夫が撮ってみました! 結果はいかに!? 的なケミストリカル怪談映画。僕自身が最近いろいろと怪談づいていることもあり、大変勉強になったし、と同時に大変楽しんで見ることが出来ました。

 ストーリーは親の因果が子に報い、といったかんじの愛憎怪談話。主人公の新吉青年の親父が性悪だったために、なおかつ新吉青年もエロスに耽溺しがちな助平青年だったばかりに各種各様のおっかない目に遭うわけなのですが、このお話、筋を凝縮・再構成した映画という形で筋を追ってみると、新吉青年が無意味に美女たちにモテすぎて、これではまるでギャルゲーやエロゲーの主人公のようだよ。黒木瞳に惚れられたり井上真央に惚れられたり麻生久美子に惚れられたり瀬戸朝香にからまれたりと、これはいくらなんでもモテすぎだろう。そのうえ各女性キャラとのバッドエンドシナリオが終了するたびにどんどん新しい攻略キャラが追加されるという斬新なゲームシステムにも呆然。三遊亭圓朝さんのことはあまり詳しく知りませんが、きっとギャルゲーやエロゲーが好きな人なんでしょうね。書斎の本棚には無駄にデカいエロゲーの箱がずらりと並んでいたりするのでしょうね。きっと。

 もうひとつ笑ったところは……などと、怖い映画を見るとついつい「笑えるポイント」を探したくなって仕方がないという僕なのですが、ともあれもうひとつ笑ったところは、終盤の殺陣のシーン。エロ新吉を捕縛せん! と何十人もの追っ手が新吉を取り囲むシーンで、大人しくお縄を頂戴するかと思いきや、呪いの地獄鎌を装備した新吉青年は必要以上に大ハッスル。おいおいそれはハッスルしすぎだろう、とツッコミを入れたくなるくらいの頑張りぶり。『発狂する唇』のカンフーバトルを想起してしまったくらい、個人的に大好きなシーンです。



 公開前の映画なのでストーリーにはあまり触れないことにして、この後は個人的な日記でもダラダラ書きます。
 本作は試写会イベントにて観覧したのですが、試写の後に催されたトークライブも大変楽しかったです。京極夏彦先生、平山夢明先生、中田監督、そして東雅夫さん、あとついでに主役の歌舞伎の人、という面子で「女は怖い!」「“愛”は仏教だと“執着”と同義なので良くない! 怖い!」「愛は地球に祟る! とにかく怖い!」といったネガティブな話に花を咲かせていました。女性に縁のない独身男であるところの僕などは、なるほど仏教的見地からいうと一切の執着に囚われぬ大悟徹底の境地に達しているに違いない、ははは、大悟大悟、などとゆかいな気分になりました。
 イベント終了後、会場でお会いした『夜は一緒に散歩しよ』の黒史郎さんはじめ、新進気鋭の怪談作家さんたちと白木屋に集まりコミケやコスプレの話などをしていたら、トークライブで司会を務められた東さんらがわざわざ顔を出して下さったのでいたく感激しました。『怪談』を観た興奮と東さんとお話させて頂いた感動とで創作に対するモチベーションがあがり、翌日新作怪談掌編をものすごい勢いで書き上げたのですが、悲しいかなその話は全くといってよいほど怖くなく、僕はしこたま落ちこみました。怪談だっつってんのに、なんで僕の書く話にはモケーレ・ムベンベ(コンゴ奥地のテレ湖に棲む未確認生物)とか出て来るんだ。ばかじゃないの。