『ルチオ・フルチの新デモンズ』

 シチリア修道院にはエロい修道女ばっかが住んでいて、やれエロすぎる、やれ教育に悪い、しょうがないからぶっ殺せ、みたいなノリで住民総出でエロ修道女を磔刑に処し、そこから始まる町ぐるみ黒歴史隠蔽工作とエロ修道女の呪い! みたいなかんじのエロ修道女ストーリー。前半が超たいくつで、何度観ても途中で寝てしまって、四回目に早送りしながら観ることによってなんとかこの映画を制圧することが出来ました。辛い戦いだった。

 後半にはいろいろと面白いシーンもあるんですよ。おばさんの目ん玉がにゃんこにくり抜かれたり、肉屋のおっさんの舌が五寸釘でトントン打ち付けられたり、パパの体が息子の見ている前で股から真っ二つに裂けたり。でもまあ、しょせんはたいくつ映画。「あー、なんだか今日は、人間の体が“さけてるチーズ”みたいに真っ二つになる映像でも見たい気分だなあ」などと考えている奇特な方以外には、とりたてて本作を薦める理由が見つかりません。

 本作では、町の歴史を暴こうとする主人公たちに対して町の人間はこぞって非協力的で排他的なのですが、こういう「排他的な町」シチュエーションって僕、妙に好きだなあ。「町」というとらえどころのない単位から発せられる悪意というやつが、なんかこう怖くてよくないですか。

 そういやこないだ仕事の都合で大阪まで日帰り出張したついでに、前々から是非一度行ってみたかった某地区、というかぶっちゃけ西成愛隣地区を散策してきたんですが、いやもう超こわかった! 尋常じゃなく排他的なんですもん、この町。
 いわゆる日雇い労働者とヤクザとその他ごにょごにょな人たちの吹き溜まりであるこの町は、風景からして妙に色あせていて、現代日本とは色調じたいが異なっており、よそ者が溶け込むことを容易には許してくれない空気が漂っていました。たとえば物価からして現在の日本経済とは切り離されているかんじで、総菜屋のオムライス弁当200円、自販機のジュース70円、ビジネスホテル一泊1000円って一体どういうこと?
 スーツ姿という迂闊な格好の僕は、襤褸をまとった労働者兼ホームレスの方々に睨まれながらも通りを闊歩。道端には人糞やその他よくわからないものがよくわからないままに放置。そんな道路わきに磨き上げられたベンツが停まったと思ったら目の据わったヤクザが降りてくるし、そのうえそのヤクザは『マトリックス』みたいな詰襟の服を着ていて、「目が合った人間はとりあえず殺す」みたいな自分ルール持ってそうな雰囲気だし、そんなマトリックスヤクザとすれ違うのが怖くて飛田新地の路地にそそくさと入り込んだら入り込んだで、赤線地帯特有の、というか飛田新地特有の飾り窓女だらけで、しかも夕暮れ前の時間帯に通りを歩いているのは僕一人、そこに前後左右全方位から客引きおばちゃん達が現われて僕を店内に引っ張りこもうとするし、もと来た道を戻りたくてもマトリックスヤクザ・リローテッドがいるしで絶体絶命。しょうがないやってんで客引きおばちゃん達を次々にいなしながら(通行人が)無人飛田新地をゆく僕は、もしもこの道の先が大通りに通じていなかったらどうしよう、裏路地に迷い込んだら絶対に無傷では帰れないな、とビビりまくっていました。なんとか地下鉄の入り口までたどり着いた時には、街全体に漂うけだるい暑さと恐怖のせいで、Yシャツがありえないくらいの汗を吸い込みずっしりと重くなっていました。
 国内でありながらこんなにもカルチャーショックを体感できるこの界隈は素晴らしいと思うので、いつか私服で再訪してみたいと思います。あまり上等じゃなく、身ぐるみ剥がれても惜しくないような私服で。とりあえず、スーツ姿で一人行動はマジ危険! ほんっっっとうに、しゃれにならない!