『続・荒野の用心棒』

 メキシコ国境付近に現われた黒衣のガンマン、その名はジャンゴ。南軍の残党ジャクソン少佐と、メキシコ革命の生き残りウーゴ将軍の二大勢力を向こうに回し、撃つわ撃つわの大虐殺、ひと呼吸のうちに五人は殺すジャンゴ先生の早撃ち記録に周囲は唖然! 娼婦はぞっこん! 酒場の親父は酒瓶割られて大損害! といったかんじのハートフル・マカロニ・ウエスタン・ストーリー。必見!

 数あるマカロニ・ウエスタンのなかでもとりわけ異彩を放つセルジオ・セルブッチ先生の本作は、明らかに僕の大好きなタランティーノ先生やロドリゲス先生に影響を与えまくっています。たとえば『デスペラード』における「ギターケースに武器を収納する復讐者マリアッチ」というキャラクター造形は、常に武器を隠した棺桶を引きずりながら歩くジャンゴの姿に重なるわけで。また、タランティーノの『レザボア・ドッグス』における耳そぎシーンなんかも、本作にその端緒を見出すことが出来るのではないかと。更に、日本の誇る大監督、いやさスーパー大監督、いやさスーパー監督人3であるところの三池崇史監督の最新作『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』なんかもタイトルからして既に本作をリスペクトしていることがありありと判る訳で、そう考えると近年のおもしろボンクラ映画史を語るうえでは絶対に外せない一作といえましょう。

 劇中に登場する土地は、ぐちゃぐちゃに湿った『七人の侍』ラストバトル時なみの泥濘の地面ばかりなのですが、そこを黒衣にテンガロンハットのフランコ・ネロが、棺桶ずるずるぐちょぐちょ引きずりながら歩いているわけなんですよ。そんでもってBGMで♪ジャンゴ〜、お前はどこへゆく〜、悲しみの荒野を〜、みたいなシブい歌(歌詞は想像)が流れているわけですよ。くわー、かっけー、痺れるぜー。

 敵がまた悪い奴で、メキシコ人と見れば見境なく殺すメキシコ人差別主義者、すなわちメキ・即・斬な連中なんですけど、赤い覆面を被った一味に囲まれたジャンゴは、落ち着き払った様子でやおら棺桶の蓋を開け、中から取り出だしたガトリングガンをしこたま乱射。人数の差を圧倒的火力の差でもって凌駕し、ガガガガとぶっ殺すのです。ずるい! 反則だ! 反則だけどかっこいい! かっこいいから正義! かっこいいは正義!

 ラストバトルのかっこよさも異常。お馬さんに踏まれて両手がイカれたジャンゴ先生は、それでも悪のジャクソン少佐一味と決着をつけるため、墓場へと赴くのであった。両手が使い物にならないという、アシュラマン戦のテリーマン状態で決斗に臨むジャンゴ。超人レスラーならともかく、早撃ちガンマンが両手使えないでどうすんの!?
 決斗の結末は各自の眼で確かめてもらうとして、本作はとにかくマカロニ的かっこよさ濃度が異常なので、今後もどんどん世界各地のボンクラ感度びんびんな新人監督たちにデッドコピーされていってほしい作品であります。

 ちなみに、棺桶を引きずってフィールドをさまようジャンゴの淋しい姿を観ていたら、なぜだかあの小汚い棺桶の中にはサマルトリアの王子の遺体が入っているような気がして、無性に『ドラクエII』をプレイしたくなってしまいましたよ。サマルトリアの王子って、僕の記憶の中ではなんかいっつも死んでたなあ。
ドラクエIII』以降の勇者は、MAX時には棺桶を三つ繋げて引っ張り歩くわけですから、よくよく考えてみると無頼漢にも程がありますね。荒廃した西部やメキシコ国境にもそんな不吉な奴はいなかった。というか、宿屋とかふつうは泊めてくれませんよ。