『ロッキー・ザ・ファイナル』

ロッキー・ザ・ファイナル

ロッキー・ザ・ファイナル

 うおー、今日から僕、筋トレはじめます! なぜかって? 決まっているだろう。さっき新宿で『ロッキー・ザ・ファイナル』を観てきたからだッ! エイドリアーン! よしっ、まずは腕立てだっ! 立て続けに10回! なんと10回も! それを一日2セットも! どんなもんじゃーい! もんじゃりあーん!

 というわけで、ふだんは死んだ魚のような眼をして深海に棲むコウモリダコのような不穏な動きしかしない根暗な僕をかように熱血せしめる『ロッキー』シリーズはほんとうに素晴らしいと思います。あ、ここでいう『ロッキー』シリーズとは、『ロッキー』『ロッキー2』『ロッキー3』『ロッキー4 炎の友情』、そして今回の『ロッキー・ザ・ファイナル』のことを指します。僕は『ロッキー4』まで許容出来る心の広いグッドガイではありますが、そんなグッドガイでも『ロッキー5 最後のドラマ』だけはロッキー史から切り離して射出して遠く離れた銀河の彼方で爆破してしまいたいと思うことしきりなのです。ロッキーが路地裏でケンカして終劇って、そんな腐った話Vシネマでだって企画通らないよ!

 スタローン自身が「失敗作だった」と述懐している『5』の反省を活かし、今回はシリーズお得意の怒涛のトレーニングシーン、燃えまくりリングファイトのシーンも完備(おどろくべきことに『5』には両者が欠落していた)。この偉大なるマンネリズムを僕は大いに支持したい。『ロッキー』は一作目にして殿堂入り名作映画として完璧に完成しているので、その後のマンネリ化は要するに伝統芸能化ということなのであって、誰にも文句を言われる筋合いなどないのです。しかも今回は正真正銘最後の最後というだけあって、歴代シリーズの名シーンがしつこいくらいにオーバーラップしたり、トレーニング方法が『1』を踏襲したものだったり(おなじみ、吊られた牛肉をやたらめったらブン殴ったりする。行為の意味はわからんが、とにかく凄い自信だ!)と、あざといくらいの回顧演出。あざとい! あざといんだけどファン的には感涙! ビル・コンティのあの名曲「GONNA FLY NOW 」に乗って繰り広げられるトレーニングのシーンは終始鳥肌立ちまくりで、鳥肌につぐ鳥肌、鳥肌の上に更に鳥肌が立ち、なおかつその上にもう一個鳥肌が重なるという、サーティワンアイス顔負けの鳥肌のチャレンジ・ザ・トリプル状態になりましたよ。感動しすぎてもはや皮膚疾患!

 しかしそれにしてもスタローン先生の筋肉はすごかったなあ。上腕二等筋の辺りなんて、まるで完璧超人ネプチューンマンのようにビシビシ血管が浮き出ていて、往時に劣らぬどころか、更にビルドアップされていたのではないでしょうか。完璧筋肉を作り上げるためにそうとう命を削っているであろうスタローン先生の映画馬鹿っぷりに敬服するとともに、スタローン先生が命を削ってまで作り上げてくれた思いも寄らない20年越しの贈り物に心から感謝せずにはおれません。もしも本作に文句をつけるような無粋な批評家がいたら、僕がフィラデルフィア美術館の階段を昇り終えたロッキーみたいにぴょんぴょん飛び跳ねながらぶん殴りにいきます。そのためにも筋トレをして、そいつの先祖も倒すような強烈なパンチをものにせねばなるまい。よし、腕立ては1セット15回に増量だ! ふっ、無理は承知よ、どんなにキツくても、それでもスタローン先生にの努力に比べればこのくらいなんともないゼー!