『ジョジョの奇妙な冒険 ファントム・ブラッド』

 1部連載以来の古株『ジョジョ』ファンとしては観にいかねばなるまいよと思い、さっそく初日に観てきたわけです。
 が、正直ファンの贔屓目、山吹色の贔屓疾走目からみたとしてもかなり微妙な出来ではなかったかなあと。

 よかった点は、DIOの馬車登場シーンの原作に肉薄する大仰さとsoul'd outの主題歌がわりとかっこよかったことくらい。話自体はかなり大胆なダイジェストとなっており、タルカスとブラフォードらしきゾンビは2秒くらいしか登場しないし、ダイアーやストレイツォの出番はカット、ポコやポコのお姉ちゃんも未登場なので「明日って今さ!」の燃え台詞も聞けず、そして何より解せないのがスピードワゴンの存在末梢。これでは「スピードワゴンはクールに去るぜ」のクール台詞が聞けないばかりか、スピードワゴンSPW財団がかなり大きな役割を果たす第二部へと話がつながっていかないではありませんか。本作のラストでは、DIOはまだ生きているッ! to be continued...的ラストで締めているため、このまとめ方はますます解せません。そういや後にリサリサとなる赤ん坊も出てこなかったし、本作から続編を作るのはかなり至難の業なのでは。

 もひとつ解せないのがスピードワゴン(芸人のほう)の声優出演。ただでさえ間引きされて少なくなっている登場人物のうち、ダリオとワンチェンという、そこそこ重要な人物の声を素人にあてさせるとはなにごとでしょうか。そもそもスピードワゴン(芸人のほう)のカメオ出演で喜ぶジョジョファンなどいるのだろうか。いや、いないねッ と、僕はジョジョ的反語法でもって強く憤るわけです。重要人物を削ってでも90分の尺に収めて、スピードワゴン(芸人)の声優起用で話題を作り、とにかくエリナは萌えるキャラデザに……フハハハハ、とにかく作ってさえしまえば、過程や! 方法なぞ! どうでもよかろうなのだァーッ! といった制作側のDIO的思考が垣間見え、全体的にみてちょっと残念な作品です。
 まあその、あの『ジョジョ』が、かつてはジャンプの鬼子的存在として常にジャンプの後半に掲載され続けていた『ジョジョ』が、しかもあの一部が映画化されるだなんて当時想像も出来なかったことなので、映画化という快挙を喜ぶだけでよしとしたいと思います。なにぶんファンなもので。