『バットマン・ビギンズ』(幕下)
金持ちの坊ちゃんが道を踏み外して変態コウモリ男になってしまうまでの逆サクセスストーリーをつづった本作。うーん。つまらなかあないんですが、アメコミ映画化作品としての面白さの枠内に収まっちゃってるかんじ。『ハルク』の四兆倍面白かった、ということは言えても、僕のなかの金字塔変態映画『バットマン・リターンズ』と比較することはできなかったなあ。
だいたいにして、登場人物がみんなふつうなんですよ。悪人もふつうならブルース・ウェインもふつう。なにより、あの変態じみたバットスーツを着ていることからあやしげなコウモリなんかをシンボルにしていることまでいっさいがっさいを筋道だてて説明してしまっているのがなんとなく残念です。『リターンズ』のブルース・ウェインに「なんでバットスーツを着ているの?」「なんでバットモービルを作ったの?」と聞いたとしたら、「え……うーん……しいて言えば変態だから」「え……うーん……なんかこう、中学の学園祭みたいなノリでうっかり」みたいなかんじの回答で僕をなごませてくれること必定なのに、ビギンズ版ウェインときたら、ぜんぶスラスラ論理的に答えちゃうんですよ、こういうきちがいじみた質問に。それはそれでそこそこ変態だけど、やっぱりそんなの僕のウェインじゃない! 僕のウェインは、正義のヒーローの皮をかぶったド変態か、トモロヲ声でアチョーと叫ぶド変態(TV版)のどっちかなんだ!
シリーズお約束の、悪役が悪役として覚醒する悲しい背景がきちんと描かれていないのも残念でした。チベットで影の忍者軍団を指揮するケン・ワタナベさんもいたってふつうの一般悪人でしたし。あとなんだっけ、スケアクロウとかいう敵もショボかったなあ。みょうちくりんなボロい頭陀袋をかぶって僕スケアクロウでーす、とか言ってるだけなんだもんなあ。いじめられっこのロボ超人かよ! まったく、やる気があるのだろうか、この悪人たちは。彼らのなにが悪いって、体も精神もいたってすこやかなところ。すこやかすぎてつまりません。話がつまらないという観点からいえば、健全な肉体と健全な精神こそ悪だ!
本作において、今までのシリーズでコツコツ貯めてきたバットマン変態貯金、のようなものが全て枯渇してしまったように思うので、次回作では今まで以上に変態を前面に押し出してくれないとシリーズ存続の危機です。ということで、次回作のロビン役にはレイザーラモン住谷さんを推薦します。健全化の進むゴッサムシティを救えるのはもはや彼くらいしかいません。
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