『バタフライ・エフェクト』(前頭)

 欠落した記憶を遡る事によって過去の出来事を改ざんし、自分を取り巻く現在の環境を変える脅威のスタンド能力を発現させた主人公。幼なじみの女子とくっつきたくてしょうがない主人公は過去をいじくりまわし、そんでもって女子をゲットし大はしゃぎ。でもさあ、そんなムシのいい話ってあるわけないですよね。たとえば『ドラえもん』なんかだと、タイムマシンを駆使すれば歴史を変えてしまうことなどわけないにも関わらず、そんなことが出来てしまったらお話がつまらなくなってしまうというので藤子せんせいは作品世界にタイムパトロールを登場させているわけです。んでもって、歴史の流れを乱す時間犯罪者の無法者なんかは先っぽに丸い玉っころのついている曲線形の銃からバリバリ放たれる電撃のたぐいでもって一網打尽なわけです。時間いじりにはこういう厳然たるしばりがあるわけで、やっぱ藤子せんせいはSF設定の天才ですよね。
 で、この映画にはTP(タイムパトロール)がいません。その代わりに主人公はどうしようもなく不運な青年である、というしばりが存在し、TPがおらずともみずから勝手にズブズブ泥沼にはまっていくわけです。意中の女子を救えば自分がブタ箱送りになるし、それをなんとかしたと思ったら女子が立ちんぼになるし、それをなんとかしようとしたら自分の手足がもげるしで、あっちを立てればこっちが立たず、よかれと思ってしたささいな行為は悪いほうへと拡大発展、まさにバタフライエフェクト。といったかんじのハートフルタイムトラベルストーリー。多少のアラがあったような気もしますが、それを差し引いても十二分におもしろかったです。

 あ、タイトルの「バタフライ・エフェクト」というのはですね、のーてんきな節足動物の代表格といえるちょうちょ風情のショボいはばたきによって巻き起こされた微風すらも、めぐりめぐって地球の裏側では阿修羅竜巻地獄のごとき大嵐になりうる、というカオス理論の因果応報テイストを表す言葉らしいです。よく知りませんが、「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいなもんでしょうね。ちなみに「風が吹けば桶屋が儲かる」。このことわざは知っていても桶屋が儲かるまでの流れがわからない、という人が意外に多いので、ここで改めてそのメカニズムを公開します。このサイトを読んでるだけでみんなどんどん賢くなっちゃうね。



解説・なぜ風が吹けば桶屋がもうかるのか
・風がふく
→ギャルのスカートがめくれる
→男子が色めき立つ
→ギャルは用心してスカートをはかなくなる
→街のスカート屋さんがつぶれる
→失業した元スカート屋さんは精神的にあやうくなり、宗教にすがる
新興宗教団体「ドリル真理轟天教」に入信
→2000万円の高いドリルを買わされる
→「地底に楽園がある」という教義に基づき、元スカート屋は毎日自宅の庭を掘り続ける
→三年後、庭の穴から温泉が噴き出す
→元スカート屋は温泉旅館を開業。大量の風呂桶が必要になる
→桶屋が儲かる


 うーん、このフローチャートを見る限り、一番儲かっているのはどう考えてもドリル真理轟天教ですね。「風が吹けばドリル真理轟天教がもうかる」。あなたの凝り固まった悪心を、この特別製のドリルで掘り砕くのです! ドリー、ドリドリー。ありがたやドリルさまー! 愛核神羅ドリル(ご本尊の名前)さまー!