『シービスケット』(幕下)

シービスケット プレミアム・エディション [DVD]

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 今年の干支は酉年だから景気よくパーッと鳥の映画でも観ようかな、と思い立った僕。ふはは、酉年の年頭に鳥の映画を観るだなんてこいつぁ春から縁起がソリッドだぜーっ、などと豪快に笑い、気分よさげに鼻歌を歌い、肩で風切りツタヤに大入店したのですが、なんと驚くべきことにツタヤの棚には「鳥映画コーナー」がありませんでした。「ロマンス」「アクション」「SF」ときて、このへんで「鳥」とくるかなあと思ったら突き当りの壁際は「ホラー」の棚。ツタヤの陳列ぶりはなってないですね。
 まあしょうがない、ってんで自分の知識と記憶をたどり、他の棚に埋もれているであろう哀れな鳥映画群を発掘してまわることに。えーと、鳥映画とかって、一体なにがあったっけ……ヒッチコックの『鳥』……『グース』……『チキンラン』……と、どんどん貧相になっていく鳥映画発掘作業のすえとうとう『ハワード・ザ・ダック 暗黒魔王の陰謀』などという暗黒ルーカス黒歴史映画をSF映画地層棚で掘り当ててしまいたいへんせつない気分になったので、鳥さん映画発掘作業は断念。鳥類とはぜんぜん関係ない生き物であるところの哺乳類ウマ目ウマ科、いわゆるおウマさんの映画『シービスケット』を借りて観ました。というわけで今回の映画は『シービスケット』です。とまあ、ここまでが前フリなのですが、どうでもいいうえに長いですよね。さて。

 息子が死んでショボくれ中の富豪ハワード、片目の見えないポンコツジョッキー、野生馬や駄馬とたわむれまくってふと気づいたら周囲から変人呼ばわりされていたポンコツ調教師、そして他の馬の当て馬にされ続けすっかりグレてしまったポンコツサラブレッド。そんな各界のポンコツ代表がガサゴソと寄り集まって奮起しようとハッスルしたりしなかったりする、実話を基にしたアメリカ競馬界の『プロジェクトX』。あらゆるシーンで田口トモロヲさんの幻聴ナレーションが聴こえてきます。

老調教師が、言ったー
“少し傷ついただけで命あるものを見殺しにはしない”
それを聞いたハワード、胸にこみ上げるものが、あったー
そこにいるのは、馬と同様、傷ついた男たちばかりだったー
“馬はスピードじゃない。ハートだよ”
ハワード、この男を信じ、傷物の小さい荒馬を買う事を、決めたー
騎手に選んだのは、大柄な無名のジョッキーだった。定評があったのは喧嘩っ早さだけー
赤毛のレッドと、呼ばれていたー
皆、傷だらけだったー

 みたいなかんじ。随所随所がわりといいかんじにプロジェクトXっているのですが、『プロジェクトX』は45分で困難→工夫→挫折→転機→逆転→ヘッドライトテールライトの6連コンボを高速かつ鮮やかに叩き込んでくれるから面白いのであって、一方本作ときたら140分もありやがるため全体的にひどく緩慢で退屈です。時折映し出されるお馬さんの走る姿がかっこよかったからなんとか最後まで我慢しとおせたものの、もしこれがヤギさんメーメーレースの話だったりカエルぴょこぴょこレースの話だったりでんでん虫やり出せつの出せレースの話だったとしたら、とてもまぶたを開けて起きていられるものではなかったでしょう。ウマさんのかっこよさにこれほど助けられている映画も珍しいです。やっぱりウマという生き物はトリなんかとはちがって気品があるというか、ほんと美しかっこいいですよね。ハワード・ザ・ダックとかって見た目にも品がないし言葉遣いもなってないし、ほんともうダメ。トリはダメ。なんか鳥インフルエンザとかいってとつぜんバタバタ死んだりするし、頭おかしいんじゃないの。マジキモい。ありえない。酉年とかってゆるせない。うわ、そういや今年とかって酉年だし。うあー、ついてねー。こんな一年はやく終わっちまえばいいんだ。