『バスケットケース』(幕下)

 シャム双生児のドゥエインとベリアルはお互いのテレパシー能力のおかげでなんでもツーカーな仲良し兄弟。しかし醜い兄ベリアルを憎み蔑む父親は無理矢理二人の分離手術を施し、ドクターは切除したベリアルをゴミ袋に入れて廃棄! むごい! ゆるせない! 怒りにまかせ父親を殺した仲良し兄弟は更に復讐の炎を燃やし、ドクターの住むニューヨークへ! バスケットケースに兄貴をつめて、潜水艦のように夜を急げ! といったかんじのハートフルフリークスストーリー。戦え! 何を!? 人生を!

 弟のドゥエインはいたって普通の外見なのですが、兄貴のベリアルの造型がなんともすごいです。目を背けたくなるようなヤバい顔のついた肉塊の横っちょに鉤爪付きの手がついているだけという、ビーンズマン操る「モンスター一号」みたいなクリーチャーデザイン。言うにこと欠いて『キン肉マン』のキャラクターに喩えられるなんて、それはつまりそうとうの奇形であるということを意味します。僕はフリークスに理解のあるフリークスフリークだからよいようなものの、ふつうの人がこれを観たらシャム双生児に偏見を抱いてしまうのではないのかしら。外見もさることながら、奇形兄貴ときたら心まで歪んでんだもんなあ。彼女の出来た弟に嫉妬した兄貴がその恋人を殺し犯すシーンのなんと醜悪なことか。ばかな人がこれを観て「あっ、わかったど! やっぱし健全な精神は健全な肉体にしか宿らないんだど。おで、五体満足でよかったどー!」みたいな結論を得ませんように。キレーはキタナイ、キタナイはキレー、などと言いますが、醜悪な兄貴の醜悪な行動の裏にかくれた歪んだ美しさこそが『バスケットケース』の魅力でしょうかね。フリークスかっけー。

 それにしても、自分でいうのもなんですが、『世界の中心で、愛を叫ぶ』の次に『バスケットケース』を取り上げる僕のセンスってハンパなくクールですよね。われながらかっこいいゼー。