『山猫(完全版)』(幕下)

山猫【字幕版】【前編・後編】 [VHS]

山猫【字幕版】【前編・後編】 [VHS]

「口にしただけで女子にモテそうな監督の名前ランキング」上位にランクインし続けるルキノ・ヴィスコンティ監督の大作歴史叙事詩シチリアの貴族のおっさんが移りゆく時代の流れを肌で感じてシュンとする、といったかんじのハートフル山猫ニャンニャンストーリー。完全版を劇場で観ました。時間にして3時間20分。長い。どうなってんだ。ドクター中松の平均睡眠時間よりも長いじゃないか。あまりの長さに鑑賞中幾度も舟をこいでしまったため話の内容理解もおぼろげで、3時間の鑑賞のすえ頭に残ったのは「ガリバルディってモビルスーツみたいな名前だなあ」とか「タンクレディって『タンクガール』みたいな名前だなあ」とか「アラン・ドロン夏侯惇みたいでかっけーなー」といった程度の偏差値の低い感想のみ。かんぺき中2レベルです。おはずかしい。

 あ、そうそう、他にも感想があった。ありました。えんえんと続く舞踏会のシーンは絢爛豪華ですげーなーと思いましたよ。パーティーとか宴会とか合コンとか、人がたくさん集まって楽しげに笑ったりする場所というのが僕はきらいなのですが、舞踏会はべつ。超行きたいです。だってさ、若い娘からいい年こいたじーさんまでが揃いも揃って「欽ちゃんの仮装大賞」の審査員みたいなゴテゴテした服を着て、でっかい屋敷に集まって、ケーキとか肉とかエビとか食って、で、腹が膨れたらダンスにつぐダンス、それゆけダンスの大攻勢ですよ。ばかみたい。なんだこの享楽は。この世にポッカリ空いた享楽地獄への入り口だよ舞踏会ってやつは! 合コンとは異なり、家柄の貧しい庶民の娘は参加していない、「とりあえずビール!」みたいな貧しい食膳を囲んだりしない、というのもこれまた魅力。ぜひ僕も参加させていただきたいので、どなたか僕に招待状を送ってください。僕の舞踏会参加における阻害要因として「平民である」「ダンスが踊れない」という問題が挙げられますが、いざとなれば皇族を詐称しますし、ダンスのほうは僕が唯一踊れる「キン肉マン音頭」のステップを応用してうまく立ち回りますので、おそらく問題ないと思います。♪ドドンが牛丼、ニニンがニンニク、かっかっ火事場のクソ力っ、ときたもんだ!

 舞踏会映画を観ていていつも不思議に思うのですが、最初はみんなでワルツとか踊っていて、主人公とヒロインもその中にまじってクルクル踊っているんですが、次第にノッてきて、いつしか他のダンサーたちはみんなはじっこにハケちゃって、二人だけがフロア中央で踊り狂い他の連中はそれを観てうっとり、といったサタデーナイトフィーバー状態になり、ダンスが終わると万雷の拍手、みたいな展開ってよくありますよね。あれってどういうことなんですか。本物の舞踏会でもダンスのうまいいちカップルにフロアを譲るサタデーナイトシステムになっているんでしょうか。それとも「あっ、なにお前ら自分の世界に浸りまくって周囲が見えなくなってんの!? さっきから隣で踊ってる僕らにガツガツぶつかっちゃって本気で痛いんですけど。あーもう、またこっちに寄って来たよ! まわり見えなさすぎ! もういいよ、フロアぜんぶ使ってお前らだけ好きなように踊ればいいじゃん! まわりの迷惑もかえりみず二人でヨロシク踊るがいいさ! 僕らは一旦ハケてお前らが踊り狂い終わった後でゆっくり踊るよ。さあケメ子さんお手をどうぞ、この無頼漢どもの狂乱のダンス・マカーブルが終わるまで一旦避難しましょう」みたいな迷惑行為に対する貴族的自己防衛術なのでしょうか。もしも僕のキン肉音頭ステップがフロア占有状態になった時、羨望と迷惑、果たしてどちらの意味と受け取るべきなのでしょうか。前者であってほしいものだなあ。うあー、今から緊張してきました。招待状も届いていないうちから。手の平に「貴」と書いて食べる民間療法というか貴族間療法で体の震えを緩和させつつ頑張って踊ります。あそーれ、ちょちょんが超人、ぴぴんがピンチに、きっきっ奇跡の大逆転!