『MAY-メイ-』(小結)

MAY メイ APS-30[DVD]

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 目の障害のためカリブの海賊みたいな眼帯を装着して過ごした孤独な幼年期。そんなメイの唯一の友だちは母のくれたエボニーデビルみたいな気持ち悪い人形ただ一体。首尾よく屈折しながら成長したメイは愛情表現の方法もユニークで、コトにおよんだ男子の唇を食いちぎろうとしてフラれる始末。レズの同僚には裏切られるわ、子どもに人形をぶっこわされるわでもうさんざん。人間なんて部分的には良いところがあったとしても総合的に見ればどうしようもないクズばかり。紆余曲折の末メイがたどりついた結論は「完璧な友達がいないなら造ればいい」。かくして「メイ専用最強友だち」用の各種パーツを集める地獄のハンティングが始まる……といったかんじのハートフルサイコフランケンストーリー。これは名作ですよ。観ている身としては終始もんどりうちっぱなし。序盤はメイのイタさにもんどりうっていたのですが、後半はもう切なくて切なくて胸が締めつけられて、もんどりうたずにはおれぬ切なさ。2004年ベストもんどりシネマはこの一本!

 それにしても本作の主人公メイさんのすごさときたら。ノーマン・ベイツのサイコっぷり、ミザリーの歪んだ愛情、キャリーの爆発力、トラヴィスの間違った恋愛術、そしてトーマス・ブラウン・ヒューイットの縫合術、その全てを併せ持つスーパーヒロインなのです。ウルトラ怪獣でいえば暴君怪獣タイラント。悪魔超人でいえば悪魔将軍さま。さらには吉良吉影フェティシズム夏侯惇の胆勇までも備えているというのだから、並のヒロインなんざまるで相手にならないゼー!

 将軍さまことメイさんのイタさに惹かれ、切ないラストに心動かされつつも、でもやっぱりこういう女の子につきまとわれたら困るだろうなあ。いくらかわいくたって、家の前に二時間も立ち尽くされたあげく、家に上げたら上げたでグロい話ばかりして一人盛り上がり、あげく口を噛み千切られるというのだから男としたらたまりません。まあ、興味本位で不思議っ娘に手を出すとヤケドする、という教訓めいた話ともいえますね。「この地方では、親が女にだらしない息子をたしなめる時には『火遊びがすぎると戸口の前にハロウィン衣装のMAYが立つよ』といって脅すのだという」といった口承が民俗学者によって採集される日もそう遠くはあるまい。いや遠い。それはちと遠いな。