『ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルス』(前頭)

 カード賭博で莫大な借金を作ってしまったボンクラ四人組は壁の薄いアパートの隣の部屋に住むボンクラ強盗団の麻薬強奪計画を盗み聞きし、ブツの横取り大作戦を画策。ボンクラ強盗団が狙う大麻栽培集団もやっぱりボンクラなので、強盗団にエアガンで対抗したりとボンクラ魂全開。その後もボンクラ麻薬王、ボンクラ銃泥棒、ボンクラポルノ王、しつけに厳しい子連れ狼といったアクの強いキャラがあっちこっちでからみ合い、ごちゃごちゃにからみまくったあげく終局に向けてからんだ糸がワシワシほぐれていくさまはテトリスで四段消しが決まった時のような爽快感。すばらしきオールボンクラ大進撃映画です。必見!

 必見! とは書きましたが、正直前半部はそんなに面白くありません。大勢のキャラクターたちとその関係性の説明に時間を割いているため、予習勉強をさせられているような、そんな義務教育テイストが濃厚です。おっさんのビールの飲み方でいえば、風呂上がりのアサヒスーパードライを少しでもうまくするためにサウナにへばりつき、汗をたらしたらしうぐっとかうぶぶとか呻いている段階に相当するでしょう。正直ちょっと退屈。ただでさえ登場人物たちの絡みがわかりづらいうえ主人公格四人のキャラクター性がFFⅢなみに弱く、そのうえFFⅢなみに各俳優の見分けがつきにくい。みんなして貧乏くさい顔をしているので、まったくもう誰が誰なのか。しかしこの義務教育タイムが終わればあとはもう超ハイパー愉悦。中盤からラストに向かって加速度的にガンガン面白くなっていくので、どうか皆さん前半は眠らないでがまんして観てください! 義務教育をやりすごせ! この支配からの卒業!

 それにしてもイギリス映画に出てくる貧乏人たちは、金を作る方法つったら
①ヤクをかっぱらう
②ハダカになる
の二択くらいしか思いつかないので困ったもんですね。イギリス英語には「労働」「地道」「誠心誠意」に相当する単語は存在しないのでしょうか。さすがは世界最大のパンク大国。