『テキサス・チェーンソー』(幕下)

 チャラい若者排他的殺戮地域テキサスを舞台にしたハートフル虐殺ストーリー『悪魔のいけにえ』のリメイク作品。『いけにえ1』が好きな僕も安心して観ていられる正統派リメイクです。ご存知リー・アーメイのアドリブ地獄もフルスロットルで、ほんとうにテキサスはこわいところだなあブルブル。レザーフェイスとかリー・アーメイとかテリーマンとか、まったくテキサスにはロクな生物がいやしないよ。

 ある共同体に迷い込んだ主人公が不条理な体験をし、共同体の悪意によってコテンパンにのされる、という諸星大二郎的ストーリー展開がとても恐ろしくて楽しい『テキサスチェーンソー』シリーズ。仙台に住む僕から見て日本の「不条理共同体テキサス」はどこにあたるだろうかと考えると、それすなわち関西の、大阪とか尼崎とかそのへんに該当します。僕がいちばん理解に苦しむ文化が根づいている土地だから(そっちらへんに住んでいる方ごめんなさい)。

 本作では人口のまばらさと屈折したイナカ者根性が「殺人鬼一家」という特殊な狂人集団を育む土壌となりましたが、もし舞台を関西に移すならば、殺人鬼をそこに育む要因はきっと「お笑い文化」にちがいない。夜の尼崎を跋扈する全身ジャージ姿の殺人鬼「ジャージフェイス」の都市伝説。何も知らずに尼崎に迷い込んだ僕ら東北出身の青年団。夜の街で次々と失踪する団員たち。そして僕は仲間の一人が目の前でジャージをかぶった殺人鬼にたこ焼きを転がす用のピックでめった刺しにされるさまを目撃する。慌てて警察に駆け込み状況を説明するも「どないやねん!」「なんでやねん!」とヘラヘラ笑ってツッコまれるだけで誰も相手にはしてくれない。そう、関西の人間はすべての情報をお笑いのネタとして処理しようとする、東北人にはまったく理解不能な一面をもっていたのだ! 関西人の性質を知り尽くしたジャージフェイスは、頭からジャージをかぶるという"ツッコミ待ち"な外見を装うことでお笑いタウン尼崎に潜伏し続けていたのだ! そして僕は執拗な追跡を続けるジャージフェイスから逃走を続けるうちに、更に恐ろしい事実に気づく! じつは尼崎の町民どもは血まみれの惨劇さえもブラックジョークとして求め期待する禍々しい悪魔どもであったのだ! ジャージフェイスは尼崎に潜伏していたのではなく、尼崎そのものがジャージフェイスを必要とし、あまつさえ庇護していたのだ! ボケとツッコミと悪意と殺戮に彩られた街・アマガサキ。惨劇の夜はまだ終わらない……『アマガサキ・タコヤキピック・マサクゥル』! カミングスーン! みたいな! やばい! 超こわい!

※僕は尼崎に行ったことがないので、ほんとはどんな町なのかよく知りません。