『赤ひげ』(十両)

赤ひげ [DVD]

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 長崎帰りの若き見習い医師保本の配属先は文無し専門療養機関「小石川養生所」。保本すっかりグレちゃって、ボスの赤ひげに反抗したり酒を飲んだり病人にちょっかいかけたりやりたい放題。ところが赤ひげの貧乏人へのガッツあふれる医療ケアっぷりに保本は次第に心を動かされ……といったかんじのハートフルあごひげもしゃもしゃストーリー。僕の好きなキャラは飯炊きおばさん連。

 赤ひげ役はいわずと知れた世界のミフネ。いかついミフネが医者を演じるというだけでも面白いのに、赤ひげが意味なく強いという設定にはさらに大ウケ。赤ひげがヤバい界隈の用心棒十数人に取り囲まれ襲われるシーンがあるのですが、ここでの赤ひげは梅澤春人マンガの主人公のような脈絡なき強さ。またたく間に用心棒どもの骨を折りアゴを外し地べたに這わせ、その強さまさしく悪鬼羅刹。仁王立ちの赤ひげを中心として同心円状に広がる地獄絵図。その光景をしげしげと見回した赤ひげは「うーん、これはよくない。医者ともあろうものがこういうことをしてはいけない!」などと突然一人で怒り出し、ここでまた大笑い。ほんと楽しい映画ですよこいつあ。

 マンガやドラマに登場する名医はわけもなくストロングな人が多いですね。本作の赤ひげしかり、ブラック・ジャックしかり、スーパードクターKしかり。「対人戦における強さ」というものは何か医術の腕と関係があるのでしょうか。医療技術と腕っぷしの強さが比例関係にあるとすれば、オスカー・デラホーヤヒクソン・グレイシーなんかは末期ガンをも完治させる奇跡の医療技術を兼ね備えているということになりますね。アントニオ猪木の闘魂注入はインフルエンザ予防接種と同等の効果をもたらすにちがいない。アントン・マテ茶を飲めば風邪の初期症状くらいは余裕で緩和させられるにちがいない。医術が先か闘魂が先か、どちらが先かは知らねども、医療をこころざす若者たちよ、まずは体を鍛えなさい、極真空手を習いなさい、迷わずいけよ、行けばわかるさ、ありがとう! そして馬鹿になれ! 馬鹿になれコノヤロー! 馬鹿は風邪ひかないんだコノヤロー! パラオの海は竜宮城だコノヤロー!