『jackass number two』

jackass number two the movie 限界越えノーカット版 [DVD]


「危ないことをしてるのはスタントマンかバカです。良い子やクソガキ、幼稚な大人の方は絶対にマネしないように」
というおなじみのテロップから始まるjackassシリーズも、テレビシリーズ、映画版第一作、外伝的位置づけともいえる『WILD BOYZ』を経て、これが映画二作目。ここまで死人が一人も出なかったのは奇跡としか言いようがありません。そして彼らは、「過ぎたればバカも人を感動たらしめる」といもう一つの奇跡をも我々に見せてくれました。

「やあ、俺はジョニー。わなにかかるぜ」
(卓上に置かれたトラバサミに手をつっこむ)
「ぎゃー!」

みたいな、その行為になんら意味を見出せない愚かしい行為がえんえんと続く本作。おちんちんをヘビに噛ませる、おしりにおちんちんの形の焼印を押す、頬にフックを突き刺してサメのいる海域に飛び込み「よーし、サメの一本釣りだー!」とのたまう、小人であそぶ、特に意味はないがナンバー・ツー(うんちの隠語)をする、特に意味はないが馬のナンバー・ツーを食べる、特に意味はないが馬の精液を飲む等々(排泄系のネタがいつもより増量気味)、識者とかPTAとかトンガリのママとかが観たらショックで内臓が破裂するんじゃないかというくらいの、おろか映像のオンパレード。こういった苛烈なパフォーマンスをjackassのメンバーたちは男子校の昼休み感覚でヘラヘラ笑いながらこなしており、そこがまた観ていて清清しい。

 本作のラストでは唐突にミュージカルがはじまります。彼らは無駄に痛々しいスタントをこなしながら「♪明日は明日の風が吹くー」と歌うのですが、そこで僕は感動して泣きそうになりました。今まで自分は目に見えない引っかきキズ程度のことでいちいち立ち止まったりしていたけれど、人間というのはかくも頑丈な生き物だったのだなあ。人間ってタフですばらしいなあ。人間超頑丈説の提唱。ありがとうjackass

 僕は映画にまつわる怪事件をあざやかに解決する専門探偵、いわゆるシネマ探偵をなりわいとしており、僕の事務所を訪れる依頼者たちは当然何かしらの悩みを抱え鬱々とした表情をしています。なかでも、事件の概要聴取さえ困難とおぼしき抑うつ状態の依頼者が来たときには、僕はまず書棚からjackassのDVDを取り出して彼らに貸し与え、その日はそのまま帰ってもらうことにしています。後日、改めて事務所を訪れた依頼者の九割には「こんなもん見せんな」とおもいっきしぶん殴られますが、残りの一割は実に晴れ晴れとした良い顔になっています。ある敬虔なクリスチャンの夫婦にDVDを貸した時などは「バカに救われた」「バカは偉大だ」「主なる神が知恵の樹から人間を遠ざけようとした意味が初めて理解できた」ということをしきりに話し、相談しようと思っていた案件もどうでもよくなったと言って帰って行ったものでした。仕事は減るし、九割の人にはぶん殴られるので、もうjackassの貸し出しは止めようと思います。