『キング・コング(2005年版)』

 これは面白い! 間違いなく今年の公開作のなかでナンバーワンの面白さです。旧「シネマ番付」の基準に照らし合わせるならばだんぜん横綱クラス。夕べの「こちトラ自腹じゃ!」で井筒監督は三点満点中一点しかつけていなかったけど、彼はおおむね映画の見方がわかっていないので、そんな評価は信用しなくていいですよ。

 もうね、井筒のいう33年版との比較がどうとかこうとか、そんたこたあどうでもいいんだよ。おれたち刹那的な若者は、21世紀の、いまの『キング・コング』さえ観られればそれでいいのだ。他にも井筒はコングの動きがリアルじゃないとかなんとかわけのわからんことをほざいていたけれど、それもやっぱりどうでもいいことなんだよね。じゃあお前は南海の孤島に赴いて本物のキングコングをその目でまじまじと観察してきたとでもいうのかよと、おれたち若者はあの老人に小一時間問い詰めてやりたいぜ。そもそもおれたち若者はCGにリアリズムを感じるバーチャル世代だから、スケールに対するコングの動きが速いとか遅いとか、んなこた別段どうでもいいのだ。そんなことよりも本作がおれたち若者の心をつかんで離さない要素は、近年の作品に絶えて久しかった探険・冒険・アドベンチャーのテイストに溢れていること。そう、なんたっておれたち若者はたった一人の例外もなく『藤岡弘、探検隊シリーズ』が大好きなのだから!

 前段落は最後の最後で牽強付会になってしまった感が否めませんが、とにかく本作は藤岡探検隊好きの僕にはたまらないジャングル探険秘境ムービーなのでした。水曜スペシャル風に紹介すると「スマトラ沖東進2000キロ! 禁断の髑髏島奥地に、世界第八の不思議トレ・コングは実在した!」みたいなかんじ。ギャガーン!
 探検隊シリーズではすっかりお馴染みの「丸太橋からの転落シーン」(コングに橋を揺らされる)、「土人とのふれあいシーン(お菓子をあげようとして噛みつかれたり頭蓋を砕かれたりする)、「ジャングルの虫やサソリにさいなまれるシーン」(巨大インセクトや巨大ワームに船員が食い殺される)もあますところなくフォロー。このあたりはいずれもピーター・ジャクソンの悪趣味ぶりが炸裂している名シーンであり、土中から現れるワームの口蓋のピンク色は観ていて本当に気持ち悪いし、チョコレート色の肌をした土人たちは「原住民」などという収まりのいい単語を使うのをためらうほどにパンキッシュ。白人女を縛り上げては白眼を剥いてトランスまつりを開催したりします。これぞ土人! さすが土人

 そしてコングをはじめ、次々と現れる数多のUMAたちのビジュアルと、その流麗な動きっぷりにも大感動。レックスとアパトサウルスと探検隊との三つ巴サバイバルレースとか、コング対V-REX三兄弟の美女争奪空中ロープデスマッチとか、先述した人類対地底生物連合軍の命を懸けたバトルロイヤルランブルとか、あるいは摩天楼に立つコングと複葉機との、野性と文明、双方の誇りをかけた地球最強タイトルマッチとか、こうした弩迫力かつアイディアに満ち満ちた衝撃の格闘シーンには一見どころか八十八見くらいの価値あり。

 こんなにも面白い作品を、井筒の狂言に惑わされてとうとう観なかった、なんていうことがあったりしたら、あなたの人生にとってそれは一大事なので、一刻もはやく観に行くべきだ。奇しくも今日はクリスマス・イブだが、たとえ恋人を質に入れてでも、今すぐ劇場にゴリラを観に行くべきだ! 恋人よりもゴリラだ!
 ちなみに僕はといえば、今夜は33年版『キング・コング』を観る以外にまったく予定がないという衝撃の事実! 駆け込みで彼女を作り、ゴリラのような急造恋人と過ごすクリスマスよりも、恋人のような愛すべきゴリラ映画と過ごすクリスマスを、僕という勇者は選択したのであった。なんて気高い。気高すぎるゼー。