『カーテンコール』

 てっきり『ニュー・シネマ・パラダイス』や『虹をつかむ男』のような、大衆文化として映画が愛されていた頃の古き良き時代を懐かしむノスタルジー映画だと思って観に行ったところ、途中からとんでもない方向に話がローリング転がっていったのでおどろきました。『フロム・ダスク・ティル・ドーン』の手法を悪用した問題作です。

 伊藤歩さん演じるタウン誌編集者が下関の映画館で働いていた幕間芸人の足跡をたどる、というのが一応のあらすじ。うらぶれた映画館のおばちゃんから当時の様子を聞き、活況に富んでいた頃の映画館の様子に想いを馳せていたりする前半部はけっこうよかった。ニューシネ臭ぷんぷんで、僕はこういうの好きです。館でかかっている映画のセレクトもなかなかよかったし。『あの子を探して』『座頭市』『網走番外地』等々。 
 問題はその後。幕間芸人は映画館を去り、その後の消息は杳として知れなかったのですが、主人公の懸命な取材によって幕間芸人が在日朝鮮人だったという事実が判明。そこから先は、なんだかもうすごいことに。“古き良き映画館”とか“ノスタルジー”なんつうファクターは完全にそっちのけで、主人公の目的も「幕間芸人のノスタル記事取材」のはずが「失踪した在日朝鮮人とその娘との再会大作戦」へとすり替わり、ロケ地も下関から韓国は済州島へとすり替わり、とつぜん出てきた主人公の幼なじみの在日朝鮮人が「民団の組織力ってすごいんだぜ!」と失踪した幕間芸人を颯爽と見つけ出し、主人公が幼なじみに「在日だからという理由で昔フッちゃってゴメンなさい!」と謝罪する、というジェットコースター在日万歳・日本謝罪ムービーへと豹変。
『フロム・ダスク』のクライムムービー→アクションホラー活劇、という裏切りっぷりには観ていてこころ躍ったものだけれど、本作の変貌ぶりに関しては、なんだかキャッチセールス詐欺の被害に遭ったような気がして(伊藤歩ちゃんがむだに可愛かったこともあいまって)、正直いい気持ちがしませんでした。こんなやり方をしてまで自分の主張を観客に押しつけようとするからこの界隈の連中は嫌われるんだよ。