新文芸坐のオールナイト上映企画「江戸川乱歩VS石井輝男増村保造実相寺昭雄塚本晋也」で、ソフト化不可能の大怪作『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』をようやく観ることが出来ました。オーケンのエッセイでこの作品の存在を知ってから十年以上。ついについに、ようやくやっとめぐり合えた、そんなかんじです。

 十年来の期待を裏切らない、素晴らしい作品でした。乱歩の『孤島の鬼』『パノラマ島奇談』をベースにしながらも、さらに『人間椅子』や『白髪鬼』、『屋根裏の散歩者』あたりの猟奇漂う怪しいテイストを夜の夢こそマコトとばかりにしっちゃかめっちゃかミキシング。な、なんということだ。こんなことが……物理的に可能なのか。これは……これは猟奇界の『スーパーロボット大戦』だ!

 暗黒舞踏土方巽の作り上げた「島」は、言ってみればオール奇形大進撃テーマパーク。船下りをすれば奇形人間たちが岸のあちらこちらでくねくねと意味不明・説明不能暗黒舞踏や暗黒猟奇を暗黒大披露。船に取り付けられた燭台もよく見ると、というかよく見なくたって金デュラルみたいな金粉人間製。なにこの醜悪なアトラクション。正直いってすっげー楽しいんですけど! これはもしかして猟奇界のジャングルクルーズなのかっ!?

 そして「生きた人間の部品を使って馬頭観音像を作る」という壮大な夢を心に抱き続ける情熱大陸ドリーマー・土方巽のアングラ舞踏は誰も頼んじゃいないのに御丁寧に二回もリピート! もうわかったから! もうわかったからさ! その土方が銃を構えれば明智が「おっと、弾は抜いておきました」などというてきとう極まりないご都合展開。クライマックスだというのに場内に広がる失笑の波。そして今なお伝説として語り継がれるラストシーンの「おかあさーん!」をついにこの目で目撃。すげえなあ。ほんとすごい。ソリッド! こいつは天才の仕事ですね。誰もかないません。さすが石井輝男。ふざけた猟奇でよくがんばった! 感動した!

 今回初めてオールナイト上映というものを体験したのですが、いいもんですね。これまたオーケンの『グミ・チョコレート・パイン』を読んで以来、B級映画好きのかわいい女の子と名画座でオールナイト上映を観て、早朝のファミレスあたりで観た作品の感想をあーだこーだと語り合う、というのが僕の考える理想のデートなのです。なんで僕にはそういうB級文化系彼女がいないのだろう。生きた人間の部品を使って作ろうかな。猟奇の果に。(ヒモロギ)