『続・夕陽のガンマン』(前頭)

「善玉(the good)」「悪玉(the bad)」「卑劣漢(the ugly)」のならず者三人が200万ドルの隠し財宝をめぐって共闘、裏切り、出し抜き、決斗のおおさわぎ! 立ちまくりのキャラクター、かっこいいやり取りや台詞の数々、病的にシブかっこいいオープニングとテーマ曲、主要登場人物の吹き替え声優がルパンと次元と銭形の声の人等々、称揚すべきポイントはアホほどあるんですが、僕がいっとう称揚したいのはやはりラストの“三すくみ決斗シーン”。『レザボアドッグス』も間違いなく影響を受けているであろうあのシーンにつきます。三人のガンマンがそれぞれ三角形の頂点にあたる位置に陣取り、まずは互いをねめつけます。誰も銃に手をかけてはいません。しかし、彼らの銃からやがて撃ち出されるであろう銃弾の軌跡は見えない三辺を形成し、映画史上もっとも美しく、そして最も繊細で最もかっこいい三角形がスクリーンに出現します。そしてまた、ここのところのタメが長い! 長い! 脆く壊れやすいと思われた三角形は、今度は逆に永遠を予感させるのです。すばらしい。いま映しだされているのは三人のガンマンなのか、それとも宇宙の真理かなんかなのか。僕はこの映画のこのシーンが宇宙的に大好きです。

 というわけで三すくみ対決! かっこいいよね! 日本で「三すくみ」といえば、蛙、蛇、蛞蝓の関係がつとに有名です。ナメクジはカエルがこわい。カエルはヘビがこわい。そんでもってヘビはナメクジがこわい。これが日本の伝統的三すくみ関係。ヘビとカエル、カエルとナメクジは捕食関係ってことでまあわかりますけど、ヘビがナメクジを怖がる理由が謎です。なんらかの心的外傷(トラウマ)によるPTSD、ぐらいにしか解釈のしようがありません。だってヘビはそれなりに進化した脊椎動物であり、かたやナメクジなんつう無脊椎動物は無害無毒のショボい貝類にすぎないのだから実力差は歴然。あとは気持ちの問題でしかないですよね。日本のヘビ類各位には一層の奮起を期待します。がんばれ! ヘビがんばれ! ファイトだヘビ! ヘビガンバ!

 などと、爬虫類の応援などしている場合ではないのでした。というかこの文章は『続・荒野のガンマン』というマカロニウェスタン映画のレビューなのであり、ヘビの一匹も出てこない映画のレビューの文中でヘビを応援するという行為は、韓国代表の試合ではないにもかかわらず応援席に巨大な韓国国旗をおっぴろげテーハミングクドドンがドンドンとか騒いでるレッドデビル応援団と同じくらい間違った行為でした。猛省します。

 さて三すくみ。日本の三すくみはわけわからん、という話をしていたのでした。ね。そこへいくとイタリアのマカロニ三すくみはわかりやすい! ガンマンはガンマンに撃たれる! ガンマンはガンマンに撃たれる! そしてガンマンはガンマンに撃たれる! うわーい、単純だよマンマミーヤ! ナメクジなんつうJ-ホラー的陰気生物は三すくみに混ぜてあげない陽気なイタリア人! ♪あそーれボンゴレロッソ! ボンゴレロッソ!

 というわけで、ラストの三すくみガンマン決斗がかっこいいのでみなさん観てください。興奮することうけあいですよ。僕なんか食べ終えたボンゴレのアサリのカラをカスタネットがわりに打ち鳴らして乱舞するほど興奮しましたもん。『夕陽』といい『ニューシネ』といい『デモンズ』といい。イタ公の作る映画はほんとうに素晴らしいよ! ボンゴレロッソもおいしいしサッカーも強いし、マジでイタリア最高!