新れんさい「少年映画探偵 二十世紀FOX面相」のおしらせ

 どこぞにゆかいですてきな映画ブログはないものかしら……そんなことを考えながら、webの大海をただよう有象無象のサイト群をたずね歩いていたある日の昼さがり。私はまるで白昼夢のごとく不可思議なブログに迷いこみました。
シネラマ島奇談」なる奇題を冠したそのブログは、江戸川乱歩調の文体と探偵小説の体裁をとりつつ映画の話題や感想を読者に供するという趣向で、まあ実際はさしたる感想が書かれていたわけでもなかったのですが、本朝にまたとない奇怪千万なコンセプトに感じいった私は、ブログのRSSをリーダーに登録し、次回の更新をくびを長くしながら待つことにしました。

 しかしふしぎなことに、待てど暮らせど、ウンともスンとも、ブログはいっこうに更新されません。よっくとみれば、私が楽しみにしていた長編読み物「シネラマ島のなぞ」は2007年を最後に更新が途絶えているではありませんか。4年ものあいだ筆が絶えてひさしいとは、もしや書き手の怪青年になんらかの災いがふりかかったか、あるいはブログの更新を心よしとせぬ悪党の手にかかったか。更新を待ちわびる私の心はかき乱されんばかりでした。

 絶望の思いにワナワナと手をふるわせながらもブログをくまなく点検すると、きみょうなことに気づきました。「シネラマ島のなぞ」の主人公を任じる映画探偵氏の名前はヒモロギといって、私のペン・ネームとまるで同じだったのです。
 私と怪ブログをつなぐ不可思議な接点、そして私はなぜこのブログにかくも強く惹かれるのか――その謎をとくため、私は米国へ飛び、みなさんおなじみ「ヒル夫妻誘拐事件」においてベティ・ヒルとバーニー・ヒルに逆行催眠療法をこころみ、レティクル座ベータ星人に封印されし魔の記憶をみごと呼びさましたさいみん術の専門家、サイモン博士を頼りました。魔法のように鮮やかな彼のさいみん術によって失われた記憶を掘り起こしたところ、なんたる奇縁! 実はこのブログ、私がむかし自分で書いてうち捨てていたものであることが判明したのです。なるほど、どうりで面白いはずです。さすが村いちばんの神童とうたわれた私だけのことはあります。

 更新がなされぬ理由に得心するいっぽう、ストーリイの続きを読むためには、じぶんで続きを書かなければならないという面倒くさい事実も同時に判明しました。なんという悲劇! もしジキルとハイドのように私に人格が二つあって、善なる読者ジキルである私の気づかぬうちに猟奇者のハイドがせっせとブログを更新してくれていたらどんなによいだろう、などと夢想しましたが、残念ながらわたしは、抑圧も虐待もない健全な少年時代を過ごしてしまったため、悲しいかな人格はたったの一つしかなく、したがって、やはり自分で物語の続きを書かなければ自分の心すら楽しませることができない呪われた身の上なのです。

 そのようなわけで、自分のために「盲獣村」のれんさいをおっつけ再開しますが、最先端の逆行催眠技術をもってしても昔考えていたお話の展開をまったく思い出せぬため、執筆には多少の困難が予想されます。
 ついては、同時進行で学童むけの新れんさい「少年映画探偵」のお話を書き進めることで自分と読者の皆さんの心を安んじるつもりです。

 このお話は、20世紀FOXの映画作品を愛してやまない神変ふかしぎの大怪賊「二十世紀FOX面相」と、帝都随一の映画探偵ヒモロギ小十郎との、力と力、知恵と知恵、そして映画を愛する心と心、火花をちらす、一騎うちの大闘争の物語です。
 映画探偵であるヒモロギ氏には、単身尾道から上京し、もっか修行中の身である少年助手、大林宣雄くんが『七人の侍』の若侍勝四郎のごとく付きしたがっています。尾道三部作とジブリ映画と『仁義なき戦い』とカフェーの女給をこよなく愛するこのかわいらしい小映画探偵の活躍もなかなかの見ものでありましょう。
 さて、前おきはこのくらいにして、次回からいよいよ、大こうふん、驚天動地の胸おどる冒険活劇風映画感想ブログの幕を開けることにいたしましょう。